橋本英郎公式サイト「絆」
FRIENDS

vol.23 たむらけんじ(芸人)

たむけん : ハシピーは海外に行ってみたいとかって思ってるん?
橋本 : 行ってみたいですよ。

たむけん : 全く違う世界なんやろうね。
橋本 : 違うと思います。そもそも、やり方が違いますからね。っていうのも海外は基本、1対1なんですよね。1対1で勝ったか、負けたかを繰り返して成立するサッカーなんです。でも日本の場合、組織対組織みたいな…11人対11人ですからね。そこが根本的に違う。
たむけん : じゃあ、日本も1対1で勝負することを考えたら強くなるんじゃないの?
橋本 : いや、それをしようと思っても日本人の能力的に、1対1では勝てないんです。だから、日本人は組織でやることを学んで身につけよう、ってやっているんですけどね。
たむけん : J1、J2と、いろんなチームがあるけど、その中で海外的なサッカーをしているチームはあるの?
橋本 : ないと思います。ただ、オシムさんは…基本、マンツーマンだったんですけど、その中に巧いこと組み合わせていくトレーニングをやってチームを強くした。それが弱いチームを強くする近道だとは思いますけどね。他にも大分も…前のシャムスカ監督なんかは、1対1で勝てるポイントを作って、そこだけ絶対に潰すっていうようなサッカーでしたね。ただ、それだと失点はしないけど、得点はそんなに多くなかった。オシムさんは、そこに攻撃の部分を加えたサッカーだったから強かったけど。
たむけん : ただボッ~と見ているだけやったら、そういうのって分からへんけど、話を聞いていたらサッカーも奥が深いよなぁ。じゃあ、監督次第で、弱かったチームが急激に強くなることもあるっていうことか。
橋本 : あると思いますね。でもそれも、ちょっと悲しいですけどね。それって、選手に力がないのか、あるのか、微妙ですから。
たむけん : でも、戦術にちゃんと応じてプレーできる技術が選手にもあるからやれるんじゃないの?
橋本 : そうとも言えるけど、「この監督なら出来たのに、この監督ではできない」っていう選手もいますからね。それが監督に力がないのか、選手に力がないのかが微妙なところで…。でも本来、選手というのは、監督が代わっても、それに対応できるべきだと僕は思っていますけどね。たむけんさんも、「どんな仕事がきても断らない」って言ってたけど、基本、選手もそうあるべきじゃないかな、と。出来ないことを監督のせいにして、それを逃げ道にしちゃうと、自分で自分の成長を止めてしまうような気もするし。
たむけん : ハシピーは、基本「なんでもします」ってタイプでしょ?
橋本 : はい。

たむけん : 俺はそれは絶対に大事だと思うけどね。お笑いの世界でも絶対にそうやと思うからこそ、俺も基本的に仕事は断らないねんけどさ。ただ…もう絶対にしたくない仕事はあるけどね。『Qさま!』でやった高飛び込み。10mの高台から飛び込むねんけど…あれは本気の冷や汗がボタボタ落ちたから。
橋本 : 高所がダメなんですか?
たむけん : いや、そうでもないねんけど。スカイダイビングで一人で飛んだこともあるし。普通、お笑い芸人がそういうのをやる時って、インストラクターの先生とハーネスで固定して一緒に飛ぶ、タンデムスカイダイビングっていうのをすることが多いねんけど、俺は最初から一人で飛んでるからね。だから、仕事になったらやれるけど…でもあの高飛び込みの10メートルという高さは生々しい。近すぎるけど、遠くて高いっていうのが、かなり怖い。スカイダイビングまでいけば、足元も見えへんし、逆に思い切れるけど、高飛び込みって微妙に下も見えるし、余計に嫌なんよね。
橋本 : 生命の危険を感じたことはないですか?
たむけん : あるよ。実際、下手な落ち方したらどこを打つとか、誰々がケガしたとか、飛ぶ前にビビらされるしさ。そういう意味では、ホンマに怖いよ。
橋本 : やっている側の人と違って、テレビを見ている側の僕らは、収録されたやつを見るじゃないですか。だから急に「30分後」とか、間が省略されていたりして… そういう意味では、そこまで怖さが分からないですけどね。
たむけん : そう、そう(笑)。こっちは地獄やのに、その間はカットされてて最後だけ、みたいなことになってることもあるよね。しかも、何人か飛ぶ時は、一番目なら何分かかって飛んでもいいねんけど、3番になると、時間制限があったりするわけよ。飛ぶ自分も「おもしろおかしい時間にしなあかん」って考えたりするし。だからホンマやったら思い切り、ポンといきたいところを、少し時間をかけたりするねんけど、結局、それって自分の首を締めるというか。上で飛ぶのを待つ時間が長いほど怖くなってくるし、いろんなことを考え出すと、だんだん飛べなくなってくる。あれはホンマに地獄よ。
橋本 : 結局、何分くらいで飛んだんですか?
たむけん : 確か16分くらいかな…。
橋本 : めっちゃ早いじゃないですか!てっきり、一時間くらいかかったんかと思いましたよ。

たむけん : いや、ホンマのことを言うと、その時間内に飛んでもらえたらって言われてたんよ。俺が3番目やったから16分くらいがギリギリや、と。もちろん、俺がホンマに飛ばないと成立しないからヤラセではないねんけどさ。でもディレクターの方には「無理やったらいいです。飛べなければ、それはそれで面白いですから。ただ…僕はこんな感じが面白いとは思いますけどね~」って言われていたりもして…。そうなると余計に嫌なプレッシャーがかかるし、逆にその言葉にメラッときて、飛んだるねん!ってなったりもして…でも、時間が経つほど、怖さが増す、みたいな。あれだけはホンマに辛かったなぁ。
橋本 : 他にも怖い思いを結構してはるでしょ?
たむけん : してるね。奈良にある修験道の総本山、大峰山に行った時も、肩にたすきみたいな命綱をつけて、崖の上に立たされるんよ。たすきの先は人が持ってるだけやねんけどさ。その状態で崖っぷちで前にガンと出されて「お前はちゃんと親孝行をしてるか!」とか聞かれて、してへんって言うと、その状態で更にガンって前に出されるねん。下はもちろん、断崖絶壁やで!あの時は、普通に悲鳴が出たね。完全に下に落ちる、っていう感覚やから。俺ら芸人って、ある程度、大げさにリアクションすることもあるけど、あの時はホンマに心底、怖くて、普通に悲鳴が出たからね…悲鳴ってこういうことを言うんやな、ってマジで学んだもん(笑)。
橋本 : 最近はそういうのはあまり見ないですよね?
たむけん : 確かに、テレビの世界自体があんまり危険なことをやらせられないって方向にはいってるよね。そういう意味では、今の若手の子は可哀想やなって思う。そういうところで学ぶこともいっぱいあるのに、その経験の場がない訳やからさ。俺らが若手の時はホンマにひどかったからね。ヌカがいっぱいのバケツの中に、頭からボンッて投げられたり…窒息する可能性もあるのに、関係ナシやから(笑)。そういうことも昔はテレビでも平気でやっていたけど、最近はなくなったからなぁ。ある意味、俺らは幸せやったかも知らんけどね。

text by/misa takamura

たむらけんじ/プロフィール
1973年5月4日生まれ。大阪府阪南市出身。愛称、たむけん。吉本興業所属。大阪府立和泉高等学校卒業後、吉本総合芸能学院(NSC)に入学。11期生で同期には、陣内智則、ケンドーコバヤシ、中川家、ハリガネロックら。本名、田村憲司。芸人として活躍する傍ら、『炭火焼肉たむら』を経営する株式会社田村道場の代表取締役でもある。『おはよう朝日です(ABC)』『探偵ナイトスクープ(ABC)』『せやねん!(MBS)』『ちちんぷいぷい(MBS)』などレギュラー多数。昨年から始まったガンバ大阪の応援番組『ガンバTV 青と黒(MBS/毎週月曜日、深夜1:35~放送)』のメイン司会を務める。