橋本英郎公式サイト「絆」
FRIENDS

vol.40 おのだ徹(おのだクリニック副院長)

橋本:医者になろうと思ったきっかけは、ご実家が開業医だったから、ですか?
おのだ:そうですね。うちは父親が内科医で、姉二人も内科医と皮膚科医ですからね。父や姉を見て、という部分も大いにあったと思います。

橋本:確か、中学までは地元の学校に通われて、高校から岡山に行かれたんですよね?
おのだ:そうなんです。寮生活をしながら岡山の高校に通っていました。
橋本:じゃあ、意外と規則にも縛られて、高校生活を謳歌する、という感じではなかった?
おのだ:僕にとってはまず親元から離れるというのが嬉しかったので、意外と寮生活は楽しみましたよ。でも後から、世間一般で言うところの高校生活はもっと楽しいものだったんだな、と気づきました(笑)。僕の高校時代は、学校の帰りに買い食いしたり、映画を観に行ったり、恋愛をしたり…そういうのは皆無でしたから。学校から帰って夕食後、19:00~22:00までは自習の時間とされていて、テレビを観られるのも、22時からの1時間と決められていましたしね。だから、僕の高校時代…1988年から1990年のことが全く分からない(笑)。おかげで90年のイタリアW杯も全くリアルタイムでは観れなくて、悔しい思いをしました。
橋本:そこ?! さすがサッカー好きですね~。じゃあ、その時期だけは鬼のように勉強をした、と。
おのだ:いや、そうでもなかったです。さっきも言ったように、僕はどちらかと言えばあまり手本にならない生徒でしたから。悪いこと…といってもそんな環境なのでやることは限られていますけど…自習時間もマンガを読んだり、友だちと喋っていたりすることも多かった。ただ、全寮制だったことで、自分で何でも出来るようにはなりましたね。掃除や洗濯も含めてそれは後の人生に活かされました(笑)。
橋本:携帯もまだ普及していない時代ですよね?

おのだ:そうですね。だから外部との接触も殆どなく…雑誌なんかを買いにいけるのも土曜日しかなくて、しかも、当時の地方の書店には必ず遅れて届きましたから。いや、まだ売っていたらマシな方で、欲しい雑誌も手に入らないことの方が多かった。
橋本:じゃあ、その反動で、大学あたりからファッションにも目覚めた、と?
おのだ:いや、大学に入ってからも、2年間はまだ寮生活が続きましたから。しかも、6畳一間しかない窮屈な部屋で暮らし、寮に帰ると身体がかゆくなる、みたいなこともしょっちゅうでした(笑)。高校時代もそうでしたが、シャワーを使える時間が決められていて、それ以降に帰るとみんなが浸かったあとの湯船のお湯で洗うしかない、というような不潔な生活をしていました(笑)。当時は違和感なくやっていましたが、今になって考えると二度とできない、というような経験が多かった気がします。
橋本:お医者さんを育てる学校となれば、もっとセレブな環境が整っていそうな気がしますけど、そうじゃないんですね(笑)。じゃあ、弾ける時代が来たのは大学3年生以降か…。
おのだ:そうなりますかね(笑)? でも確かに、3年になると一人暮らしをしてもいいし、車にも乗れるようになりましたからね。そこからようやく、世間並みの生活が始まったという感じです。
橋本:話が前後しますが、高校ではサッカーをしようとは思わなかったんですか?
おのだ:そもそも、高校にはサッカー部がなかったので、バスケットをしていました。それもあり、僕のサッカー選手としての人生は中学時代で終わってしまったので、今はいつかプエンテFCで1分でもいいから試合に出るとうのが目標です(笑)。

橋本:いいじゃないですか! どうせなら子供たちに混ざってサッカー教室から参加します(笑)? ただ、普段運動をしていない人が急にスポーツを始めると、大けがに繋がっちゃうかもしれないので、気をつけてください。実際、急に運動をしてケガをする人のケガのレベルって、重いですからね。捻挫レベルではなく、アキレス腱を切断するとか、骨折するとか、重度の肉離れを起こすとか。おもしろがって急に入ってそういう目に遭った人をたくさん知っていますから、くれぐれもご注意を(笑)。だって、先生は確か、運動不足だって言っていましたよね?
おのだ:はい。医者でありながら、自分は不健康そのもの。いろんなところにガタがきて最悪です。なんとか改善したいなと思っているのですが、自分のこととなるとなかなか、そうもいかない(笑)。
橋本:今の時代、いろんな医学の進歩があると考えれば、治療ということでも改善できる部分はあるのかも知れませんが、やっぱり根本的な部分で、身体を動かす、だとか運動をするというのはすごく大事なんじゃないかと思います。
おのだ:いま『根本的』とおっしゃいましたが、僕は医療にも、原点に戻らなければいけない部分がたくさんあると感じているんですよね。もちろん、いろんな研究が進み、進歩していくのはすごくいいことですが、それだけではいけないんじゃないか、と。例えば、橋本選手も耳馴染みがあると思いますが、ピロリ菌ってありますよね?
橋本:知ってます。ピロリ菌! 一時はよく聞きましたよね?
おのだ:胃潰瘍の原因の1つとされているピロリ菌ですが、体内から除菌するためには、抗生物質2種類と、いわゆる胃薬を飲むんです。ですが、その抗生物質というのは、日頃から我々の内科でも出すし、外科や耳鼻科でもよく出されるということもあって、体内に耐性菌ができてしまい、いざピロリ菌を除去するために飲んでも除菌率が非常に低くなるというデータがあるんです。それに対し、今年(2012年)、ある日本人医師が『LG21などの整腸剤を飲んでから薬を内服した人と、整腸剤を飲まずに薬を内服した人では、前者の方が除菌率が高くなる』という研究結果を発表された。これは、ある意味、原点に立ち返るという意味で興味深いことでした。と同時に、これを受けて僕が感じたのは、新しい医療、最先端の医療も大事だし、医療の発展はもちろん目指すべきですが、それは原点をないがしろにするということではない、ということです。また、次々と開発される薬に頼るばかりの医療ではなく、もっと予防医学の部分も見つめ直す、そういう原点に返る必要があるんじゃないかということを最近はよく感じています。

text by misa takamura

おのだ徹/プロフィール

開院50年の節目を迎えた大阪市阿倍野区のおのだクリニック副院長。地域密着をモットーに、内科全般から皮膚科及び画像診療に至るまで幅広い医療を行うドクター。
おのだクリニック
大阪市阿倍野区西田辺町2-8-2 TEL:06-6691-0872
http://www.onodaclinic.com/