橋本英郎公式サイト「絆」
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vol.37 中川聴乃(バスケットボール選手)

橋本:そう言えば、以前から一つ聞いてみたいことがあって。バスケットの選手がシュートを打つときって、ボールの弾道っていうか…自分の手からボールが離れてゴールが決まるまでの弧を描く弾道みたいなものって見える?
中川:他の人のことは分からないけど、私は基本的にゴールを見て打つ感じだから、ボールの弾道は特に気にしていないし、弧の角度などをイメージしてシュートを打つこともはないかな。
橋本:バスケットの選手で、その弧を見える人っていないのかなぁ。なんていうか…ボールを投げた瞬間に、自分の投げる角度とか、弧を描く感じが見えるというか…。
中川:どうだろ…基本的には、そこをイメージして投げている人は殆どいないんじゃないかと思いますけどね。逆にサッカーのフリーキックの時に、それをイメージして蹴る人っているんですか?
橋本:横浜Fマリノスの中村俊輔さんはFKの時のボールの軌道が見えるらしい。だから、例えば、ここにボールを落とすためには、こういう軌道を描けばいいっていうことをイメージして蹴るらしいよ。そう言えば、前に日本代表で一緒だった時に、各自が手で持っているボールをある地点に投げ入れるっていう遊びをやっていたのね。そしたら俊さんが「その角度で入れても殆ど入らないよ。こういう軌道を描いて投げてみなよ」みたいな話をしていて。実際、俊さんは、ボールを入れたい地点と自分との距離の間に生まれる空間を見極めた上でゴールまでの軌道を描き、それにあわせてボールを投げる、と。で、「んん?!」と思ってよくよく話を聞くと、セットプレーの時も一緒らしく、ゴールを見てというよりは、自分が描く軌道にあわせてボールを蹴る、って話をしていたんよね。そういえば、ずっと前のテレビ番組で俊さんの『空間能力』がすごく高いっていうことが取り上げられていたのを見たことがあるけど、それってバスケット選手にも言えるんじゃないかなってふと、思ったから聞いてみたんだけど。だって、バスケットの選手ってゴールの後ろのボードなんかに当てずにサクサク、ゴールを決めちゃうでしょ?

中川:そうですね。でも、基本は軌道を意識して投げている人は少ないと思う。実際、試合が進むにつれて疲れてくると、ボールの軌道がどんどん低くなってしまって…ゴールまで一直線に投げるみたいな感じになって周囲からは「上げろ!上げろ!」ってよく言われるんです。結局、疲れてくると腕力がなくなってきて上に投げようと思っても投げられなくなってしまう。でも、それを思うと…意識していないだけで軌道というのはある程度、自然と思い描いて打っていることもあるかもしれませんね。
橋本:今はとにかくしっかりと足を治すことが先決だろうけど、復帰後の目標などは描いたりしている?
中川:とりあえず今は最初にも話したように、来年4月くらいにはチームの練習に合流できたらいいかなと思っているので、まずはそこからですね。当然、選手として目標はあるけど、まずは動けるようにならないと何も始まらないから(笑)。
橋本:前にちらっと聞いたことがあるけどバスケットのシーズンって確か10月~3月よね。試合数は年間でどのくらいあるんだっけ?
中川:リーグ戦は、同じチームと4回対戦することになるので、全部で28試合。その他カップ戦とか天皇杯があるから…1シーズンはマックスでも40試合前後だと思います。だからシーズン中は結構日程が詰まっています。
橋本:それ以外の6ヶ月はひたすら練習しているの?
中川:シーズンによっては9月からリーグがスタートする年もあるけど、基本は10月~3月なので、それ以外はひたすらトレーニングです。シーズンが終わってすぐの4月は長いオフが1ヶ月くらいあるんですけど、それ以外はひたすら練習をする。
橋本:しかも1チームわずか15人くらいでしょ? めちゃめちゃハードそうよね。確か、3部練習とか4部練習とかもあるって言ってたよね?

中川:ありますね。4部練習の時は、朝食を食べる前に6時くらいから1時間程度身体を動かして、朝食を食べて、9~12時まで練習して、昼食を食べて、15時半くらいから3時間程度練習をして、夕食を食べて、仕上げは20時くらいから1時間ほど…そこは練習というより、シューティングとか、技術的な練習が多い感じです。といっても、私はシャンソンに入ってから殆どケガをしているので、フルで全部の練習をやったことって実はまだ一度もないんですけどね。
橋本:今年で何年目だった?
中川:6年目ですね。
橋本:じゃあ、足が治って戻った時が大変かもね。それだけ練習をして嫌になることってないのかな?
中川:ゲームがない時期は…さすがに嫌になることもあります(笑)。
橋本:オフはある?
中川:週に1回はあります。でも連休は年に1~2回あればいい方だと思う。7月に毎年、1部、2部に関係なく、いろんなチームが集まってサマーキャンプというのをするんですけど…そのあとはいつも1週間くらいの休みがありますしね。ただ、その間にジャパンに選出されると、そのオフも潰れて合宿に招集されちゃったりもするので結局休めない。
橋本:うちの遠藤保仁状態やね(笑)。代表と言えば、確か聴乃ちゃんもジャパン入りしているよね?いつから?
中川:高校生の時からです。
橋本:え?!高校生が代表に?それってバスケット界では普通のこと?

中川:普通ではないかな…でも私が高校生で選ばれた時は、同年代から3人選ばれていました。これはかなり珍しいケースだったみたいですけど。でも試合にはサブで出るみたいな感じでしたから。その時に「やっぱりいくら選ばれても試合に出なきゃ意味がない」と思ったことも後々、自分が頑張るきっかけになった部分はあった。
橋本:そんなに毎日ずっとバスケットをやっていて…しかも大きなケガをして、もういいかなって思うことはない?
中川:今のところは、まだないです。嫌になることは正直あるけど、でも目標があるから、そこにたどり着くまでは辞められないなっていう思いは強いです。
橋本:それがさっき言っていた『選手としての目標』?
中川:はい、今はとりあえずチームに戻って試合に出られることが一番ですけど、その後は、やっぱりまた代表に復帰したいです。
橋本:聴乃ちゃんが感じる『代表』の魅力とは?
中川:レベルが高い人の中でプレーすることの楽しさというか。動いていても、より自分の良さが引き出されるような感じがするし、実際に出せるし、「ああ、こういうことも出来るんだ!」みたいな発見もあって、刺激もあって、本当に楽しい。
橋本:世界の中での日本女子ってどのくらいのレベル?
中川:どうだろうなあ。まずアメリカはダントツに強くて、あとは…オーストラリアとロシアも強い。で、アジアでは最近は韓国が頭角を現しつつあります。少し前までは中国がダントツ強かったんですけど、最近はその差が縮まって来た感じもありますしね。
橋本:強いチームとの差って何?

中川:やっぱり体格差あると思う。しかも中国の選手って身長が高いのに動けるし、シュートの精度も高い。それに比べると日本は、中国や韓国の身体能力的な強さになかなか技術で対抗できないという感じはある。ただ日本人にも最近は背が高くて、俊敏な選手が増えてきているので、差は縮まりつつあると思います。/p>
橋本:そうかあ、そんな話を聞いていたら試合を観に行きたくなってきたわ。でも大阪に女子のチームはなかったよね?
中川:ないですけど、でも、試合は関西でも結構しますよ。大阪や奈良、京都や神戸でも何度も試合をしていますしね。また時間があれば、観に来て下さいよ。
橋本:ぜひ行きたいね!お互いもう少し復帰までに時間がかかりそうだけど、しっかり治った暁にはお互いの試合を観戦することにしようよ!
中川:いいですね!私もぜひまた生でサッカーを観てみたいです。橋本さんは年内復帰はできそうですか?
橋本:おそらく…ただ、復帰しても今年は「焦らない」がテーマだから。せっかくこれだけ長い時間をかけて治したのに再断裂したら最悪だから、とにかく焦らずマイペースで復帰を目指すよ。今日はどうもありがとう。聴乃ちゃんはまだしばらく病院生活が続きそうだけど、うまく気分転換をして頑張ってね。
中川:ありがとうございます!

text by misa takamura

中川聴乃/プロフィール
1987年4月26日生まれ。長崎県出身。182センチ。フォワード。地元長崎の仁田小学校から純心中学、純心高校と進み、高校一年生時に名古屋の強豪、桜花高校に転入。その高校3年生時には日本代表に選出される。卒業後はシャンソン化粧品に入社。シャンソンVマジックの選手として1年目から活躍し、同年のドーハアジア大会の日本代表にも選出された。その後は膝のケガに苦しめられる時期が続き、今年、手術を決意。無事手術を終えた今は、リハビリをしながら来年の復帰を目指している。

vol.36 中川聴乃(バスケットボール選手)

橋本:聴乃ちゃんはやっぱり身長が高いから、バスケットを始めたの?
中川:そうですね。あとは、たまたま小学校の時の担任の先生がバスケットの顧問をしていたこともあり、「バスケット部に入らないか」って誘われたんですよね。しかも仲が良かった友だち何人かが、みんなバスケットを始めたもんだから、これはもう入るしかないな、と思って入部ししました。
橋本:出身地の長崎県自体は、バスケットが盛んだったの?
中川:全国の中では結構、強いチームは多い方かも知れないです。
橋本:でも、高校時代、長崎から名古屋の高校に転校しているよね? それはなんで?

中川:中学から高校に上がるタイミングで、何校かから「うちでプレーしないか」みたいな感じで声を掛けてもらっていて。私としては本当はその時により強い高校に行ってバスケットをしたいと思っていたのですが、私の通っていた学校法人純心女子学園は中学、高校の一貫教育で知られている学校でしたからね。それもあって高校に上がるタイミングでは純心を出るのが難しいということになり「それなら、純心でしっかり頑張ろう」と思って県外に行くことはあきらめたんです。でも高校生になって、インターハイや国体に行くにつれて「やっぱりもっとレベルが高いところでやりたい」という思いがどんどん強くなって。それもあって、当時、強豪として知られていた名古屋の桜花高校に転校することを決意しました。
橋本:実際に入ってみて、桜花高校のバスケットのレベルとか練習内容は、どうだったの?
中川:それはもう、全てが違いましたね!中でも一番違いを感じたのは、バスケットをやる環境がすごく整っていたこと。実業団クラスというか…もしかしたら実業団以上にバスケットをする環境が整えられていたし、練習も厳しかったけど、高いレベルの中でプレーすることが楽しくて仕方なかった。それまで自分がやってきたバスケットとはまた違って、単にたくさん練習をして、巧くなればいいというよりは、理論的なこともたくさん学ぶことができたのも良かったと思います。
橋本:単身で名古屋に乗り込んだの?
中川:はい、乗り込みましたね(笑)。だから寮に入りました。っていうか、桜花高校はそういう生活環境も充実していた分、私だけではなく、沖縄から北海道までいろんな県から選手が集まっていました。
橋本:高校時代は178センチだったって言っていたけど、高校の中ではその身長はもちろん大きい方だったよね?
中川:大きい方だったけど、一番ではなかったですね。180センチの選手もいましたし。
橋本:180センチの女子高生って、なんか想像つかへんな(笑)!
中川:確かに、多くはないですね(笑)。
橋本:聴乃ちゃんの場合、背は高いといっても、線は細い感じだけど、女子のバスケット選手ってみんなそんな感じなの?ゴツい感じではない?
中川:どうだろう…でも私は基本的に昔からずっとこんな感じですね。筋トレはちゃんとしているんですけどね。ただ…基本的に筋トレは好きじゃないというか、あわないです。筋肉がつきすぎると、プレーの幅が狭まるし、パフォーマンスが下がる気がして…だから出来ればやりたくない(笑)。
橋本:サッカー選手でもそういう選手はいるけどね。なんていうか…キレ重視の選手は、自分のインスピレーションで動こうとした時に、筋肉がつきすぎていると身体がついてこなくなるらしい。
中川:分かります!基本、私も自分の感覚というか、直感を大事にプレーするタイプですから。

橋本:直感かぁ。イマジネーションの部分も重視されるスポーツは確かにそれがすごく大事なところもあるよね。ちなみに、バスケットはどんな能力が優れていたら、いい選手になると思う?
中川:足は少々遅くてもいいけど、1歩目が速い選手かな。抜くタイミングや、判断のタイミングなど、全てのシーンにおける『瞬間的な1歩目』の動作が速い人。そう思うからこそ、私もプレーする上で『1歩目』はすごく意識しますね。
橋本:それって、もちろん技術があっての話よね?
中川:う~ん。説明が難しいですが、技術が少々低くてもこの世界でプレーしている人たちはたくさんいて。そういう選手がどうして生き残れるかと言うと、やっぱり『1歩目』の、瞬間的な速さに長けているからだと思うんです。あとは…頭を使える人。これはサッカーや他のスポーツでも同じだと思いますけどね。
橋本:僕はまだ聴乃ちゃんがプレーしているところを見たことがないけど、自己判断では、女子バスケット界の中で聴乃ちゃんの『一歩目』は速い方?
中川:自分で言うのもなんですが…おそらく速い方だと思います。
橋本:それは意図して身に付けたものなのか、あるいは天性の才能の部分なのか?
中川:さっきも言ったように私の場合、感覚的にプレーするタイプですから。実際、これまでも頭を使ってというよりは、自分のひらめきとか直感でプレーして来た感じなんですよね。昔から、いろいろ計算して考えて、というよりは感覚で…こっちに動こうとか、あっちに動こうという感じで自然に身体が動いていた。そう考えると意図的に身につけたというよりは、天性のものかも知れないですね。
橋本:でもさっき、頭を使える選手はいい選手だって話があったよね(笑)。そことは矛盾してない?
中川:頭を使うことの大切さは社会人になって気づいたというか。今まではずっと感覚だけでプレーしてきたけど、シャンソンでプレーするようになって、頭を使ってプレーすることが出来るようになれば、もう少し自分のプレーもよくなるのかなっていう風に思えるようになりました。それもあって、今は結構、頭を使う練習をしているというか。手術をしてプレーをできないから、っていうのもあるとはいえ、最近はテレビとかでバスケットを見るにしても、以前よりも考えながら見るようになった。
橋本:『見る』部分で他のスポーツを参考にすることはある?

中川:以前は全く興味がなかったんですよ。同じ静岡を拠点とするJリーグの清水エスパルスの試合をチームメイトが観に行った時も、私は疲れるから行かない、みたいな感じで行かなかったくらいですから(笑)。でも最近は、橋本さんと知り合ったり、ケガを通して他の競技の方と接する機会も増えたことで、他のスポーツにも興味を持つようになって。テレビとかでサッカーの試合を観ながら、頭の中で「ここでこういうプレーをしたら面白いのにな」とか「こうやったら巧く行くかも」っていうようなことを考えるのが楽しくなってきた。っていうか、今はそれしか出来ない分、余計に楽しく感じるのかも知れないけど。
橋本:自分のプレーにおけるイマジネーションの部分は、どうやって身につける感じ?それも『見る』ことによって学ぶこともあったりする?
中川:いやぁ…基本、見るというよりは、やっぱり自分で動く中で、自分の感覚をプレーに取り入れていくという感じですね。
橋本:あまりトリッキーなプレーは好きじゃない?
中川:いや、むしろトリッキーなプレーが好きなんです。でもそのトリッキーなプレーも誰かを真似て…というよりは、殆ど自分の感覚ですね。「こうしたら面白いだろう」とか「こういうプレーは有効かな」って思うことをどんどんコートの中でやっちゃう。ループパスがきた時に、空中でとってそのままシュートしちゃうおとか、ガガガッ~と自分で切れ込んでいっちゃおうとか。新しいプレーの感覚が次から次へと沸いてくる感じで、それを体現していくのが楽しいんですよね。
橋本:じゃあ、今のそういう感覚的なアイデアをもとにしたプレーに、ケガをしたことによって身に付きつつある『考えるプレー』が加わったら、復帰後は更にすごい選手にスケールアップしてそうよね!
中川:だといいですけどね。ケガをする前も、今まで感覚だけでやっていたことに頭がついてくるようになりつつあったんですけど、手術の間に更に考えることのクセがついた分、復帰後、また自分のプレーがいい方に変わっていたらいいなとは思います。ただ、感覚的なものはやっぱり私の武器でもあるので、それは大事にしたいですけどね。

text by misa takamura

中川聴乃/プロフィール
1987年4月26日生まれ。長崎県出身。182センチ。フォワード。地元長崎の仁田小学校から純心中学、純心高校と進み、高校一年生時に名古屋の強豪、桜花高校に転入。その高校3年生時には日本代表に選出される。卒業後はシャンソン化粧品に入社。シャンソンVマジックの選手として1年目から活躍し、同年のドーハアジア大会の日本代表にも選出された。その後は膝のケガに苦しめられる時期が続き、今年、手術を決意。無事手術を終えた今は、リハビリをしながら来年の復帰を目指している。

vol.35 中川聴乃(バスケットボール選手)

橋本:というわけで、ここからはバスケット界の話を聞かせてもらおうかな。いま、トップリーグは8チームだよね?
中川:トップリーグであるWリーグが8チームで、あと、サッカーでいうJ2リーグにあたるW1リーグが5チームです。入れ替え戦も行われていて、Wリーグの最下位と、W1リーグの1位が入れ替え戦をします。Wリーグについては上位4チームによるプレーオフもありますよ。
橋本:シャンソンは近年、リーグ優勝はしてないよね?JOMOが強いんだっけ?
中川:そうですね。今はJOMOではなく…親会社のジャパンエナジーが新日本石油と合併した関係でチーム名が変わり『JXサンフラワーズ』と言うんですが、相変わらずそこがダントツで強い。シャンソンも以前は強かったんですけど、優勝は05年を最後に一度もしていません。つまり、私がシャンソンに入部した06年から一度も優勝していないということになる。プレーオフにあがって2位までいったことはあるんですけど、結果的に優勝はJOMOにもっていかれてしまった。最近はトヨタ自動車アンテロープスも結構強いけど、選手層の厚さを考えてもやっぱりJXサンフラワーズが一番強いと思います。
橋本:基本的に実業団という位置づけになると思うんだけど、会社のサポートはどこもしっかりしている感じ?

中川:バスケットをする環境ということではシャンソンは恵まれていますね。会社にもしっかりサポートしていただいていて、バスケットだけに専念できる環境を整えてもらっていますしね。実際、私たちはバスケットをすることを会社の宣伝活動の一貫として認めてもらっているから普段は全く仕事はしていなくて、プロと同じようにバスケットだけをさせてもらっているけど、Wリーグに所属する全てのチームがそういう訳ではないと思います。それに、うちは常駐のトレーナーやチームドクターがいますけど、そうじゃないチームもありますしね。
橋本:1チーム、保有選手はどのくらいいるの?
中川:14~15人です。サッカーは?
橋本:30人前後かな。そう考えるとバスケットはえらい少なく感じるけど、…サッカーはスタメンが11人で、その約3倍くらい保有選手がいると考えたら、5人でプレーするバスケットがその3倍の15~16人というのは妥当か。チーム内で紅白戦をするにしても最低でも倍は必要だし、ケガで離脱する選手がいたり…ってことを考えても、もう1チーム分余らせるくらいの人数はいる…よね?
中川:そうですね。ただバスケットの場合は、メンバー交代に制限がないので、監督が出そうと思えば所属選手全員が試合に出ることはできます。
橋本:フットサルのような感覚か。じゃあサッカーファンの人も、フットサルをみるような感覚で、バスケットを観に行ったら面白いかも。
中川:ぜひ、来てほしいですね。バスケットを知らない人にも見に来てもらって楽しさを味わってもらえたら嬉しいから。
橋本:いま、1試合あたりどのくらい集客があるの?
中川:場所とチームの人気によっても全然違います。Jリーグもそうかも知れないけど、強いチームはやっぱりたくさん入りますね。でもシャンソンは…毎試合500人に満たないくらいかなぁ。静岡で試合がある時はほぼ満員だったりもするけど、体育館だから満員といってもそんなに多くない(笑)。面白いカードの試合だったりすると、立ち見が出るくらい観に来てもらえることもあるんですけどね。
橋本:ファン層は女性と男性ではどちらが多いの?
中川:チームにもよりますが、うちは男性が多いですね。ただJOMOは逆に女の子のファンが多い。所属選手の雰囲気にもよるのかなぁ。例えばJOMOは男っぽくて格好いい人が多いから女性ファンが多いとか、うちはそんなに背も大きくない選手が多く…どちらかと言えば女性っぽいタイプが多いから男性ファンが多いのかもしれない。実際、身長的にも私で一番大きいくらいですから。
橋本:よく選手紹介のプロフィールに身長や体重が載ってるやん?バスケットの選手って、少しでも大きくみせたいからと、大きめに書いたりするものなの?あるいは、逆に小さくみせたかったりするのかな…。
中川:どうだろう。でも、基本的に、小さくみせてる人が多いんじゃないかな。私はそのまま書いているのに180センチもあるようには見えないらしく、たまに「大き目に書いてる?」って聞かれるんですけど、サバは読んでいません(笑)。サッカー選手はどうですか?

橋本:そこは見栄で大きめに書いている選手が多いんじゃないかな。例えば、うちのチームの佐々木勇人はG大阪に移籍してきたばかり時、プロフィールに168センチって書いてあって。「ホンマに168センチもあるか?」って話していたら、そのあとに下部組織からトップチームにあがったMF安田晃大(現ギラヴァンツ北九州)が165センチでさ。その晃大と勇人が並んだ時に「ほら、ほぼ一緒やん!」っていうことになり、そのあと、勇人はプロフィールの身長を165センチに訂正していたわ(笑)。身長と言えば、最近、聴乃ちゃんが気にしていた猫背、直ってきたんちゃう?まあ、それは小さくみせたいが為に猫背になった訳じゃないと思うけど。
中川:そうですね(笑)。これは… 自分の接する人が自分より身長が小さい人が多い分、目線をあわそうとしたら自然に猫背になっているという感じで。でも鳥取でちゃんと直した方がいいと言われてから意識してやっているとずいぶん、マシになった気がします。ただ…意識していないと気がついたらすぐに戻っちゃってることも多いです。
橋本:じゃあ、そこも徐々にってことやね。ところ聴乃ちゃんで一番身長が高いっていうことは…女子チームの平均身長はスターターの5人では何センチくらいなの?
中川:確か…平均で171~172センチくらいかなあ。
橋本:え!?思ったより小さい!
中川:そうなんですよ。だから意外と驚かれます。ポジションによっては165センチくらいしかない選手もいるので結局、平均するとそのくらいになっちゃうんです。
橋本:スラムダンクでいう宮城リョータのポジションは、小さくていい、と(笑)。
中川:そうですね。彼はポイントガードですが、他にもFWとかシューターは基本、そんなに身長が高くなくても大丈夫です。でもセンターは178~180センチ越えの選手が多いです。
橋本:あれ?聴乃ちゃんセンターだった?
中川:いや、私はFWです。FWで 180センチあるのは…珍しくはないけど、そんなに多くはないかな。ただ何人かはいますよ。それに私の場合は身長が大きい分、ポジションはFWとはいえ、センターの場所に入ってFWのような動きをしたりすることも結構あります。
橋本:じゃあバスケット選手って背が高ければいいって訳でもないのか。
中川:さっきも言ったようにポジションによっては大きい方が有利だとは思うけど、例え小さくても活きる方法はあると思います。あと、プレー的にも、例えばリバウンドをとるとか、ボールカットをする時は大きい方が有利だと思うけど、逆に小さくても、すばしっこく、うまく相手をすり抜けられる選手もいますから。
橋本:外国籍選手枠はあったっけ?
中川:私たちが籍を置く、ジャパンバスケットボールリーグ(JBL)には外国籍選手枠がないので、日本でプレーをしようと思ったら帰化をして、日本国籍をとらなければいけません。男子の BJリーグなんかは外国籍選手がOKなので、何人かプレーしていますけどね。
橋本:ちなみに聴乃ちゃんは、何才の時に一番身長が伸びたの?
中川:小学校の5~6年で10センチずつ、合計20センチ伸びて168センチになり、中学で10センチ伸びて178センチになって、高校の時に2センチ伸びて180センチになったんですよね。これで止まるかなと思ったらまだ伸びて、シャンソンに入ってからも2センチ伸びて、今に至る感じです。
橋本:すごいな!ご両親も背は高い?
中川:お父さんは178センチ、お母さんが170センチだから高い方だと思います。
橋本:確か妹さんが2人いたよね?妹さんたちも背は高いの?
中川:お父さんは178センチ、お母さんが170センチだから高い方だと思います。
橋本:へえ!姉妹でもそんなに違うんや!でもまだ一番下の妹さんはここからグンと伸びる可能性があるよね。
中川:そうですね。でも私の中学生時代が178センチだったことを思えば、さすがにそこには及ばないと思いますけど(笑)。
橋本:バスケット以外の他の競技に誘われたりはしなかった?

中川:陸上部から誘いを受けたことはあります。足も速かったので、そっちかなと思ったら、高飛びで(笑)。というのも、小学校6年生の時に市の小学生が集まって競い合う運動会のようなものがあったんですよね。出場種目は玉入れから、サッカーまでいろいろあって、そのどれかに出場するんですけど、私はなぜか勝手に「高飛び」に名前が入っていて。仕方なく出場したら、そこで長崎市の記録を出しちゃったんです。それもあってオファーがきたらしい。
橋本:高飛びって…背面跳びで飛んで記録を出したの?
中川:それが挟み飛びで(笑)。当然ながら全く練習はせずに挑んだし、他の選手は背面で飛んでいた中で、私は挟みで飛んで記録を出しちゃったから驚かれました。
橋本:それはすごいな!背面で飛んでいた人の記録を挟みで上回るって…もし聴乃ちゃんが背面で飛んだらすごいことになっていたんやろうな(笑)。しかも、今の高飛びの選手を見渡しても、おそらく日本人で180センチ以上の人っていないでしょ? そう考えると、海外に対抗していくには聴乃ちゃんのような背の高い陸上選手の誕生が求められているのかもしれない。垂直跳びとかも結構飛べるの?
中川:図ったことはありますけど…数字は覚えていないですね。
橋本:バスケット選手にとって、垂直跳びをどのくらい飛べるかはあまり関係ない?

中川:全く必要ないとは思わないけど、バスケットの場合、バレーボールみたいに上に直線的に飛ぶことより、走りながらのジャンプとかの方が多いから垂直跳びがいくら飛べても、あまり関係ないかも。ただ、滞空時間が長い選手は結構いますよ。私も空中プレーが好きなので他の人より滞空時間は…多少長いかも知れない。
橋本:鹿島アントラーズにいるFW 田代有三っていう選手は尋常じゃない滞空力やからね。ヘディングの時に完全に空中止まっているから。だから相手DFと競りあったとしても自分だけ空中で残っていたりしてる。あれはかなりの武器だと思うわ。だって彼自身の身長は180センチくらいしかないのに、190センチくらいの選手にも余裕で競り勝ったりしているからね。あ…そう言えば、彼も福岡大学から鹿島に入団した1年目に前十字を痛めたはずだけど、今でも元気にピョンピョン飛んでいるからね。ああいう姿を見ると、ケガで離脱中の僕らとしては励みになるよ。

text by misa takamura

中川聴乃/プロフィール
1987年4月26日生まれ。長崎県出身。182センチ。フォワード。地元長崎の仁田小学校から純心中学、純心高校と進み、高校一年生時に名古屋の強豪、桜花高校に転入。その高校3年生時には日本代表に選出される。卒業後はシャンソン化粧品に入社。シャンソンVマジックの選手として1年目から活躍し、同年のドーハアジア大会の日本代表にも選出された。その後は膝のケガに苦しめられる時期が続き、今年、手術を決意。無事手術を終えた今は、リハビリをしながら来年の復帰を目指している。

vol.34 中川聴乃(バスケットボール選手)

橋本英郎(以下、橋本):まずは… 簡単に自己紹介をしてもらっていい? このホームページを見てくれている人はあまりバスケットに詳しくないかもしれないから。
中川聴乃(以下、中川):静岡のシャンソン化粧品でバスケットをやっている、中川聴乃(あきの)です。今は両膝の手術をしたばかりで関西の病院に入院しています。来シーズンの10月復帰に向けて、来年の4月あたりには練習ができたらなと思っているところです…というような感じで大丈夫ですか(笑)?
橋本:ありがとう。僕が聴乃ちゃんに初めて鳥取で会ったのは…いつだったっけ?
中川:確か去年の6月くらいだったと思います。
橋本:そっか、そっか。僕が毎年、 1月のオフ中に身体のメンテナンスにいっている鳥取のトレーニング施設があるんやけど、去年だけイレギュラーで夏のW杯による中断期間中に行っていて。その時に聴乃ちゃんも来ていて知り合ったんよね。

中川:そうそう。橋本さんは鳥取には毎年来られていたそうなんですけど、私はその時が初めてで。バスケットボールの選手は殆どいなかった分、やや心細かったので知り合いになれて良かったです。橋本さんの足の具合はどうですか?
橋本:まあまあ順調かな。8月末には全体練習にも合流できそうやし、ようやくここまできたっていう感じ。聴乃ちゃんは? 確か出会った後、一度復帰したのに、そのあとまた離脱して、今回の手術ということになったんよね?
中川:そうですね。一度復帰したんですけど、自分としては難しいというか…思うようにプレーできなくて。100%のうち30%くらいの力でしかやれないという状況での復帰だったのこともあり、これはダメだな、と。実際、ドクターに診断してもらっても、手術をしないと、もうバスケットボールができないという風にも言われたので、手術をすることに決めたんです。
橋本:具体的な手術の内容は?
中川:軟骨移植手術ですね。膝の軟骨がダメになったので、それを取り外して自分の膝の外側の軟骨を移植しました。

橋本:もともと、どういう原因で痛みを感じ始めたの?長年の蓄積によるものなのか、単発的なケガによるものなのか。
中川:基本的には使い過ぎですね。実は私、半月板も3分の2しかないんですけど、それによるダメージが軟骨にもいってしまい、今の軟骨では耐えられない状況になっていたみたいで。バスケットの選手にはよくあるケガなんですけどね。
橋本:競技性を考えても、膝に負担がくるんやろうなぁ。
中川:はい…でも結局、殆どの人がだましだましというか…我慢して注射を打ちながらやっているという状況で、私もかなり我慢していたんですけど、限界がきました。
橋本:女子は我慢強いからなぁ…っていう話を前回、このコーナーで対談した岩城ハルミさんという五輪にも出場したことのある元バトミントン選手と話していたんやけど(笑)。ハルミさんも疲労骨折を我慢して注射を打ちながらやっていたら、結果的に骨が壊死したような状態になり、結局手術した、と。でもある大会に出たくてリスタートで復帰したら、今度はその周りのお肉がそげ落ちてしまって…っていう話をしていたよ。

中川:注射打って我慢って…分かります。ただ、私は手術に踏み切る前も痛み止めの注射は打っていないんですよ。というのも、痛み止めの注射を打っても良くならないという考えが自分の中にあったから。結局その時は痛みを多少押さえられたとしてもケガそのものが良くなる訳じゃないし、むしろ悪くなってしまうことの方が多いですからね。だから私は基本的に、痛み止めの薬とヒアルロン酸を週1回くらい打って、栄養を与えるということを続けていたんですけど、結局、殆ど痛みはとれなくて。って言っても、薬を飲んでとれるような痛みではないのは分かっていたんですけどね。
橋本:このタイミングで手術に踏み切ったのは、痛みに限界がきたから?
中川:それもあるけど、いま24才ですからね。ここから先の選手人生を考えた時に今しっかり治しておかないと先はないと思ったことが一番大きかったと思う。
橋本:具体的にいつまでバスケットをしたいとか考えているの?
中川:やれるところまで、ですね。

橋本:シャンソン化粧品の所属選手をみていると、一番年齢が上の人で30才くらいだったと思うけど、バスケットの世界での30才はまだ余裕でやれる感じ?
中川:やれますね。もちろん、多少練習で調整するところはあると思いますけど、身体のケアさえしっかり出来ていればやれると思うし、私もそのくらいまでは最低でもやりたい。というのもシャンソン化粧品に入部してから、ずっとケガをしていましたからね。シャンソンに入って1年目の5月に、ナショナルの合宿にいっていたんですけど、何の前触れもなくいきなり膝が腫れてきちゃって。膝が曲がらなくなってしまったから病院に行ったら、軟骨のことを言われてしまった。そこからずっと膝の痛みを抱えてやったり、休んだりでしたから、今回はしっかり治して、とにかく痛みを感じずにバスケットを思い切りやりたい。
橋本:今後のスケジュールは?さっき、来年の4月にはっていう話をしていたけど。
中川:もう少し入院した後、今度は東京の病院で1ヶ月間、リハビリ入院をして、そこで筋力をつけるトレーニングをしてもう少し筋量をあげてから、10月くらいにチームに戻る予定です。そこから来シーズンの10月の開幕に間に合うようにと思っているので…そうなると結果的に1年くらいかけてリハビリをすることになると思います。一応、ドクターには復帰のメドは術後6ヶ月と言われていますが、私は両膝を手術しましたからね。一度に執刀すると歩けなくなるから左足を3月の末、右足を8月の半ばに手術したので、来年4月くらいにはチームの練習に合流できたらいいかなと。
橋本:そうか。先は長いけど、あまりいろいろ考えずに、やるしかないもんね。
中川:はい。そこは気長に頑張ります。

text by misa takamura

中川聴乃/プロフィール
1987年4月26日生まれ。長崎県出身。182センチ。フォワード。地元長崎の仁田小学校から純心中学、純心高校と進み、高校一年生時に名古屋の強豪、桜花高校に転入。その高校3年生時には日本代表に選出される。卒業後はシャンソン化粧品に入社。シャンソンVマジックの選手として1年目から活躍し、同年のドーハアジア大会の日本代表にも選出された。その後は膝のケガに苦しめられる時期が続き、今年、手術を決意。無事手術を終えた今は、リハビリをしながら来年の復帰を目指している。