橋本英郎公式サイト「絆」
FRIENDS

vol.21 たむらけんじ(芸人)

たむけん : ハシピーは、遠藤くんと同じ年なんよな?
橋本 : そうです、そうです。あとバン(播戸竜二)と加地(亮)も。
たむけん : そやのに、なんで、会議室で飯を食べていた時、背中あわせで食べてたん?
橋本 : ハハハ(笑)。あれね。あれは特に意味はないです。みんな、ご飯の時は結構、個人プレーですからね。あそこで、敢えて集まろうっていうことはしないというか。
たむけん : 一人で飯を食うなんて、俺には考えられへん!
橋本 : でも、別に仲が悪いっていう感じでもなかったでしょ?

たむけん : 確かに、全く仲が悪い感じではなかった。なかったけど、でも俺には考えられへん。だって俺、散髪行くのにも、後輩を連れて行くもん!
橋本 : え?!散髪で?!
たむけん : そう。道中の車の中が寂しいから。
橋本 : (笑)。可愛いじゃないですか。まぁ、選手の中にもたまに連れ立って髪の毛を切りに行っている奴もいますけどね。でも僕は逆にそれが理解できない。
たむけん : 一人の時間が欲しいタイプ?
橋本 : 橋本;はい。それに、一緒に行って、先に切り終わった方は何をしてたらいいねん?って思うし。
たむけん : そんなん、なんぼでもやることあるやん!雑誌も読めるしさ。
橋本 : あ~考えられないですね。
たむけん : そうなんや…俺は基本的にワイワイするのが好きやからなぁ。でも、バンちゃんとか安田くんあたりは、みんなでワイワイするのが好きそうよね。
橋本 : あの二人は間違いなく、好きですね。僕も決して嫌いじゃないけど…でも、たまに、でいいかな。
たむけん : (笑)。
橋本 : 好きなんは好きなんですけど…。
たむけん : よね?だって、実際、一緒に飯も食いに行ったしな。俺、取材とかで知り合いになって「また呑みにいきましょう!」とかって話になって、電話番号を交換したのに、でも行かへんっていうのが一番嫌なんよね。社交辞令だけで終わるっていうか…いや、別に仕事は仕事やから呑みにいかなアカンことはないし、行かなくても全然、問題はないんよ。でも、電話番号を聞く限りは絶対に掛けてきてくれ、と思う。掛けて来ないなら聞かんとってくれ、と。だからハシピーとも、ちゃんと連絡を取り合う仲になれて嬉しいわ。ガンバの選手の中で、一緒に飯に行ったのは、ハシピーが最初やからね。
橋本 : 光栄です(笑)。あの時は、智さん(山口智)さんとか4~5人呼んで、みんなで行きましたよね。
たむけん : そうそう、楽しかったわ。にしても、俺、あの山口くんの雰囲気が好きやねんな~。
橋本 : そうなんですか!それは、取材の時の雰囲気?あるいは、ご飯に行った時の雰囲気ですか?
たむけん : ご飯に行った時の雰囲気も好きやし、取材の時の…サッカーのことをちゃんと話している感じも好きやね。あの人はなんか、人間的に好き。
橋本 : へ~すごいっ。
たむけん : 理由は分からんけど、もっと喋りたいなって思う。でも山口選手のことをみんなは怖いって言うやん?サッカーのことだけやと思うけど、俺にはそれが考えられへん。
橋本 : 普段はめっちゃ優しいんですけど、サッカーに関しては言うことをハッキリ言うタイプだから、怖いって思われるんかも。白黒ハッキリしているというか…。
たむけん : そこも好きなんよ。俺もどっちかというと白黒ハッキリしたいタイプやから。だからガンバTVで対談した時に、広報の小泉さんが俺と山口さんが話しているのを見て「あんなに話す山口選手をみたのは初めてです」って言われて、めっちゃ嬉しかったもん。普段はあまり話さないタイプなん?
橋本 : いや…初対面の人とは、確かにそんなにすぐに話すタイプではないと思いますけどね。ただ、たむけんさんの場合、初対面は食事の場だったと思うんですけど、初回から結構、話していましたよね?ああいう場だからかも知れないですけど。

たむけん : 俺、最初は山口くんのことを若手やと思っていたからね(笑)。見た目も若いしさ。後から、武田修宏さんと仕事をした時に、若手じゃないって教えてもらってんけど。
橋本 : 智さんがそんなに好きなら,今日はそこのところを深く切り込みますか!こういう時に話に出てくるタイプじゃないだけに、面白いし!
たむけん : いや、ハシピーのことも好きやねんで(笑)。でも山口くんのあの感じも好きやっていう話で。
橋本 : 分かってます、分かってます!僕も智さんは尊敬していますしね!
たむけん : 前も会った後に、すぐにメールをくれていたからね。「楽しかったです」って。
橋本 : さすが、智さんやわ…僕、そういうの、絶対に出来ないですから。結構、ルーズだし。
たむけん : ハシピーに、そういうイメージはないけどなぁ。だって結構、メールもちゃんとくれるやん?
橋本 : いや~ダメっすね。後から反省することがよくあります。
たむけん : でも気づくだけ、いいやん。気づかない奴もいっぱいおるねんから。
橋本 : でも、気づいているのに出来なかったら、かなり凹むんで、そうなると忘れようとします(笑)。
たむけん : 基本的にハシピーは、そういうのを出来るイメージがあるから、ちょっと出来ないだけで、すごい出来ひんように思われる可能性はあるかもね。
橋本 : 今日の対談も、たむけんさんから「前日に電話してな」って言われていたのに忘れていたし。
たむけん : 俺は、逆に「してな」ってハシピーに言ったんを忘れてたわ(笑)。
橋本 : それくらい鈍臭いですからね。ライターさんとは「何時からやった?」って連絡を取り合っていたのに、肝心の、たむけんさんと連絡を取り忘れるという…最悪でしょ(笑)。智さんはそのへんはぬかりないタイプのはず。
たむけん : そうやって出来過ぎるから、若手の選手が逆に近寄り難くなるんかもね。
橋本 : でも家族が実家に帰っている時とかは、若手を食事に連れて行ったりもしていますけどね。
たむけん : そういう時に、コミュニケーションを図るのも忘れへんのか…やっぱり好きやな(笑)。
橋本 : はい、そういう意味ではただ怖いだけじゃなくて、ちゃんといろんなことを考えていますよ。ただ、呑みに行ったりすることは、基本的に少ない方だとは思いますけど。
たむけん : もともと、あまり呑まないんちゃうん?
橋本 : いや、呑み出したら…っていうか、呑める時は呑むと思いますよ。この間もたむけんさんが勧めていたでしょ?そしたら、呑むんです。でも周りが智さんに対して、一歩引いている選手ばっかりやったら、敢えて智さんに「呑めよ」とは言わないじゃないですか?そしたら智さんも、マイペースで進むというか…抑えたペースで呑むんですけど、周りがあおり出したら結構、呑むはずです(笑)。
たむけん : じゃあ、今度オフに入ったら、山口くんをあおる会をしようよ。
橋本 : はい、是非!みんな呼んで…バンも…セレッソに決まったら、同じ大阪にいますからね。
たむけん : バンちゃんがセレッソに行ったら面白いやろうなぁ!
橋本 : ダービーも盛り上がると思いますよ。
たむけん : 俺、まだ大阪ダービーを見たことがないんよね。

橋本 : 大阪ダービーは結構、盛り上がります。セレッソはここ3年、J2リーグだったんですけど、同じJ1でやっていた時は…特に最近はかなり盛り上がっていましたからね。スタジアムもだいたい、満員になるし。セレッソのホーム、長居での試合は代表戦と同じくらい…42000人くらい入りましたからね。あの時は「セレッソファンってこんなにおるんや!」ってビックリした。
たむけん : 長居で試合をすると、やっぱりピンクが多いの?
橋本 : 長居でやるとやっぱりピンクが多いです。青も4分の1くらいは…多分、1万人くらいはいるはずやけど。僕的には、ガンバとセレッソのファンは半々くらいかな、と思っていただけに、ビックリしましたけどね。
たむけん : 万博だとどうなん?
橋本 : 万博は2万しか入らないですけど、1万8000人くらいがガンバで残りがセレッソみたいな感じですかね。
たむけん : そうか…って考えても、やっぱり早く新スタジアムが出来たらいいのにね。
橋本 : そう思います。
たむけん : 俺は、神戸のホムスタみたいなのを作って欲しい。サッカー専用のスタジアム。あそこの雰囲気、好きやわ。
橋本 : 一応専用スタジアムでは考えているみたいですけどね。確かにホムスタはちょうどいいですよね。あそこは、W杯の時だけ座席を増やしたんですよ。ああいう考えもアリだと思う。W杯では5万人入っても、J1リーグの試合に毎試合、5万人を求めるのは厳しいと思いますから。
たむけん : 屋根付きやから、声が響くのもいいよね。まぁ、でもいろんなことをクリアしないとアカンのやろうし、ボチボチいかな、しゃあないわな。
橋本 : 確かにそうですね。早く出来たら僕らも嬉しいですけどね。

text by/misa takamura

たむらけんじ/プロフィール
1973年5月4日生まれ。大阪府阪南市出身。愛称、たむけん。吉本興業所属。大阪府立和泉高等学校卒業後、吉本総合芸能学院(NSC)に入学。11期生で同期には、陣内智則、ケンドーコバヤシ、中川家、ハリガネロックら。本名、田村憲司。芸人として活躍する傍ら、『炭火焼肉たむら』を経営する株式会社田村道場の代表取締役でもある。『おはよう朝日です(ABC)』『探偵ナイトスクープ(ABC)』『せやねん!(MBS)』『ちちんぷいぷい(MBS)』などレギュラー多数。昨年から始まったガンバ大阪の応援番組『ガンバTV 青と黒(MBS/毎週月曜日、深夜1:35~放送)』のメイン司会を務める。

vol.20 たむらけんじ(芸人)

たむけん :基本的なことやけど、週に何回練習してるん?
橋本 : 週6回が普通ですね。

たむけん :休みは1日しかないんか…大変やなぁ。そやけど、俺らからしたらメッチャいい…っていうのも変やけど、時間が読めるのはうらやましいわ。練習にしても、試合にしても「だいたい、この時間に終わるな」っていうのが分かるやん?それに比べて、俺らはホンマに時間が読めへんから。昨日も朝の8時半から『魔法のレストラン』っていう番組のロケをやって、そのあと正月の番宣番組をやって…終わったら23時半やからね。予定ではもっと早く終わるはずやったから、その後に予定を入れようとしててんけど、なんか嫌な予感がしてキャンセルしていたから良かったけどさ。とにかく時間が読めへんのよね。
橋本 : で、今日も朝からですか?
たむけん :そう、今日は朝からラジオ番組。
橋本 : 大変ですね!
たむけん :でも基本、俺は『寝たら大丈夫』っていうタイプやから。
橋本 : テレビの世界のことはあまり知らないんですけど、例えば収録があるとして、ある程度の時間っていうのは一応、教えてもらえるんですか?
たむけん :うん、教えてくれるよ。くれるけど、あってないようなもんやからね。何時に終わるって言われていても、それが2時間遅れになるなんてことは平気であるし。
橋本 : じゃあ、1日の間に仕事を重ねて入れるのは難しいですね。
たむけん :うん、特にロケとかやったら重ねにくいよね。実際、『探偵ナイトスクープ』とかのロケの時は、丸一日、あけてあるし。
橋本 : そうかぁ…大変ですね。
たむけん :いや、大変かどうかで言えば、スポーツ選手だって大変やと思うけどね。だって、ちょっと我慢しなあかんこととかもあるやん?食事にしても、生活にしても。俺らには、それがないもん。何食ってもいいし、何呑んでもいいし…。
橋本 : まあ、そこはそうですね(笑)。
たむけん :だって試合の直前まで、呑みに行くなんて、あり得へんやろ?
橋本 : まず、ないです。
たむけん :でしょ?俺、あるもん。
橋本 : ロケの前日とかでも行きます?
たむけん :行くね。アカンと分かっていても行くんよな?。俺の場合、金曜日の朝が「おはよう朝日」で、5時半前起きで家を出ないといけなかったりするのに、木曜日の夜でも平気で呑んでしまう。
橋本 : でもまあ、それでも出来るってことですよね?
たむけん :そう、出来る(笑)。
橋本 : 逆にそれが良かったりするんですか?テンションがあがるとか…。
たむけん :いや、逆に下がるわ(笑)。やっぱり、寝たいもん。この間の金曜日なんて、朝5時半に起きて、仕事終わったのが夜中の12時やったから、結構、ヤバかった。
橋本 : 休みは全然ないんですか?

たむけん :いや、あるけど…今から年末まではもうないなぁ。でも、俺、今年は芸人になって初めて、31日がオフやねん。16年目にして、初めて。それがメッチャ嬉しい。っていうか、世間的にはテレビには出てるんよ。ただ、31日に放送される分の収録は終わっているから、他の生放送には当然、出られないし…だから大晦日はテレビには出てるけど、自分は休んでる、みたいな。それが最高。カウントダウンって行ったことがないから、今、行ってみようかなって考えてるところやねんけど…ハシピーとかカウントダウンに行ったりするん?今年の年末はどうすんの?
橋本 : 『試合前日』ということになっているはずなんで、間違いなくカウントダウンには行けません(笑)。
たむけん :あ、そうやった、そうやった!29日の準決勝・仙台戦に勝てば、元日は決勝やから、31日はそれどころじゃないわな。っていうか、間違いなく、仙台には勝てるやろ?
橋本 : 周りからは、そういう声がすごく多いけど、それが非常に怖いですね。ただ、みんながそれをちゃんと感じて戦えたら、大丈夫だとは思います。ただ…負けたら暇になるから遊んでくださいって、今、言うべきではないな(笑)。
たむけん :負けたらアカン。アカンけど、でも負けたら負けたで、引きずっていてもしゃあないしな。
橋本 : 確かにね。嫁は28日に実家に帰る予定をしていて…っていうのも、僕は28日から東京入りして、そのまま元日まで東京なんで、子どもと二人きりではちょっとまだ大変やから実家に帰るんです。
たむけん :じゃあ、もし負けたら一緒に帰れてちょうどいいな…ってアホか!アカン、アカン!絶対に勝って欲しいもん。
橋本 : 僕ももちろん、勝ちたいし、全部勝つ予定で、すべての予定を立てているから、負けるのは嫌ですよ。暇になってしまうし(笑)。でも、正直、すっごいビビってますけどね。
たむけん :確かに勝って当たり前っていうのが一番怖いからな。向こうの山はどことどこが対戦するん?
橋本 : 名古屋と清水です。僕としては名古屋が勝ち上がってくれればいいなと思っているんですけど。ここ最近清水に勝っていなくて。11月の清水戦(J1リーグ第 32節)は勝ったんで、チームとしては嫌な流れを止められたんですけど、僕はその試合にケガをして出ていなかったですから。まだ自分の中では嫌な流れが止まった感じがしていないだけに、出来れば、清水より名古屋の方がやりやすいかな、って思っているんです。
たむけん :そうや。ケガしてたんよな。
橋本 : はい。ガンバTVに出してもらった時に「ケガをせず、体調さえ整えていたら優勝できる」って言っていた自分が、ケガしてしまいましたからね。友だちからもかなり突っ込みメールがきました。
たむけん :そうやん、そう言ってたのに、な!ケガをする時って、その原因って自分で分かったりするん?
橋本 : 今回の肉離れは何となく分かりましたね。もともと、痛めた箇所にハリを感じていて。2?3週間くらいずっと張っていて、何となく調子も悪いから、いろいろと診てはもらっていたんですけど…っていう流れでブチッときましたから。ただ、僕の場合はそんなにひどくなかったから良かったんですけどね。3週間で確実に復帰できたので。

たむけん :そうよな。こんなん言っていいか分からんけど、ケガをしてすぐの時は「もう今年は無理なんで、来年、頑張ります」って言ってたよな。そういう意味では天皇杯に間に合って、良かったやんか。
橋本 : 本当に。実際、たむけんさんと話した時は、ホンマに今年は無理かもな、っていう話でしたからね。っていうのも肉離れをしたのが初めてだったから。しかも、僕が痛めた箇所が一番、再発をしやすいらしくて。もう一回やると来年にも響くからっていうことで慎重になっていたんですけど、結果的に、順調に回復できたので、それは良かったな、と。
たむけん :ケガって怖いよね。ケガをした瞬間もそうやけど、その後、なかなか本来の自分の姿に戻れなかったりすることもあるからね。
橋本 : それは今、ちょうど感じている最中ですね。まだダッシュが怖いというか…。だから、全力で走っているつもりでも、どこか自分の中で制限している感じがあって…それがなくなればいい感じにはなると思うんですけどね。でも考えようによっては、痛めたのが12月で良かったなって思うんです。これがもし1月だったら、シーズンが始まってからもずっと引っ張ることになりますから。でも12月に痛めて、しかもチームが勝っていてくれたので天皇杯にも間に合って、1月もしっかり休めますから。そういう意味ではいい時期にやったと思うようにはしています。チームが優勝争いをしている最中に離脱してしまったこと自体は当然、悔しかったんですけど。
たむけん :12月12日の天皇杯の準々決勝・鹿島戦に出た時は「ああ、戻ってこれて良かったな?」って思いながら、観てたわ。
橋本 : 最初は、あの試合に戻れるかどうかも際どくて。あの試合を目標には置くけど無理かもしれない、っていう感じだったんですけどね。ただ、しっかりそこに戻れて嬉しかったし、そこまで勝ってくれていたチームにも感謝しています。もし負けてしまっていたら、僕のシーズンも試合をしないまま終わってしまうところだったから。

text by/misa takamura

たむらけんじ/プロフィール
1973年5月4日生まれ。大阪府阪南市出身。愛称、たむけん。吉本興業所属。大阪府立和泉高等学校卒業後、吉本総合芸能学院(NSC)に入学。11期生で同期には、陣内智則、ケンドーコバヤシ、中川家、ハリガネロックら。本名、田村憲司。芸人として活躍する傍ら、『炭火焼肉たむら』を経営する株式会社田村道場の代表取締役でもある。『おはよう朝日です(ABC)』『探偵ナイトスクープ(ABC)』『せやねん!(MBS)』『ちちんぷいぷい(MBS)』などレギュラー多数。昨年から始まったガンバ大阪の応援番組『ガンバTV 青と黒(MBS/毎週月曜日、深夜1:35~放送)』のメイン司会を務める。

vol.19 たむらけんじ(芸人)

たむらけんじ氏(以下、たむけん) : わざわざ楽屋まで来てくれて、ありがとうな。
橋本英郎(以下、橋本) : いや、逆に楽屋なんて入ったことないから、入れてもらえて嬉しいくらいです。
たむけん : わざわざ改めて対談せんでも、もういろいろ話してるやん。
橋本 : そうなんですけど、そこはもう少し、真面目な話も含めて、読者の方に楽しんでもらいたいな、と。まず最初に、前から聞きたかったんですけど…なんで『ガンバTV 青と黒(以下、ガンバTV)』に出てくれることになったんですか?

たむけん : いや、実は最初はこの『ガンバTV』ってレギュラー番組とかじゃなく、特番だと思っていたんよね。しかも最初、僕は"お試し"やったというか。スタッフさんは俺でいきたい、と思ってくれてはったんやけど、そこはいろいろ…ここでは言われへんような大人の事情があり(笑)、「とりあえず最初はたむらさんでいきますけど、もしかしたら代わるかもしれません」ってことだったらしくて。だから、正式に決まってからレギュラー番組やっていうことを知ってん。
橋本 : 基本、何の番組に出るっていう話は事務所がやるんですよね?
たむけん : うん、そう。でも、最初は、そういう大人の事情もあったせいやと思うけど、事務所もあまり詳しく話してくれてなかったから、俺もあまりよく理解していなくて。ただ、基本的にスポーツが好きやし、プロサッカー選手と話せるんなら「行きたい!やりたい!」みたいなノリで出ることになってんけどさ。まぁ、俺は基本的に、来た仕事は断れへんっていうのもあるねんけどな(笑)。
橋本 : されていたスポーツって野球でしたっけ?
たむけん : そうそう。小さい時は野球で、そのあとテニスをしたり…ただサッカーだけはしたことがないんよね。体育の授業くらいかなぁ。しかも体育の授業の時は決まって、ゴール前でボールが来るのを待っているタイプやった(笑)。で、最後、シュートだけ決めて美味しいところをいただく、みたいな。
橋本 : サッカー部の奴からいいパスがくるのを貰う、みたいなタイプですね(笑)。でも、こうして番組もレギュラーになって…試合も2回くらい見に来て貰ったと思うんですけど、少しはサッカー熱が上がりました?
たむけん : そらそうよ!さっきも言ったみたいに、基本、めっちゃスポーツ好きやし、こうして直接、選手からいろんな話を聞くとやっぱり興味が沸くし、すごい楽しいよね。だから今もめっちゃ試合を見に行きたいもん。天皇杯も出来れば、生で見たいわ(注:取材は12月21日に実施)。
橋本 : 確かに、最近は興味を持ってくれてるんが分かるけど、番組が始まる前のことはあんまり知らないですもんね(笑)。ほら、この間、番組で総集編をやった時も、今年1年を通したいろんなプレーが出て来て、「あのプレーはどうやった」的な話が出た時も「ふうん、そんなこともあったんや…それどういうプレー?」みたいな感じやったでしょ(笑)。「大丈夫や!俺がわからんでも映像で流れるから!」みたいなノリでやっていたし。だから、みんなにツッコミまくられていましたもんね(笑)。でも、最近は対談を見ていても、ガンバのことをある程度勉強して、来てくれているんやなって分かりますよ。台本通りではない言葉のキャッチボールも結構、あるし。

たむけん : 一応、台本を渡されて「これを聞いてください」とか言われてるねんけど、殆ど、見ないからね(笑)。ただ、ガンバのこともまだそんなには分かってないよ。でも逆にそれでいいと思っているというか…浅はかな、薄っぺらい知識で、知ったかぶりの会話をするより、人と人が話すんやから、疑問に思うことは素直にぶつけさせてもらった方が面白いかな、と思っているから。見てくれているファンの方も、サッカーのことばっかり話されても…そんなん俺じゃなくてもいいやろ、っていうのもあるしさ。それより、もっと選手の素の部分を引き出せるような話が出来た方が面白いかなって思うねん。そういう意味では、ガンバTVでみんなでキャンプとか行きたいんよな~。めっちゃ面白そうじゃない?
橋本 : いいですね~それ!めちゃめちゃ面白そう!
たむけん : キャンプなんか行ったら、どんだけ選手の素顔が見れるか!総集編も対外、ファンの人にはたまらんかったと思うけどね。だって、選手があんな風に、学生みたいに座って、鉛筆でアンケート用紙に書いてる姿を見るだけでも、かなり面白いからね。ボールを蹴ってるところは見れても、あれはそうそう、見れるもんじゃない!
橋本 : 確かに(笑)。でも、いざ書くとなったら書けないもんですよね~。鉛筆を持つこと自体、最近は殆どないですからね。今は殆どメールやし…だから字は読めても、いざ、書くとなったら、出て来ない!実際、あれ書いている時も、そんな会話ばっかりでしたからね。「あの字、どう書くんやった」みたいな(笑)。新潟の『潟』が出てこなかったり…途中までは何となく書けるけど、最後が分からへん、みたいな。
たむけん : でも、あの姿を見ている方はかなり面白かったけどね(笑)。だからキャンプとか行ったら、もっと素が出て面白いと思うねん。あと、若手選手ももっと取り上げたいよね。木村(敦志)くんや平井(将生)くんと話した時に「僕らは出してもらえない…」みたいなことを言ってたけど、出たらいいやんな?!ハシピー推薦の若手コーナーみたいなんを作るとかさ。

橋本 : たむけんさんは、結構若い選手にも会って話しているから、きっと盛り上がると思いますしね。これがもし、初めてテレビで会う、ってことになったら、あいつらはきっと話せないと思うんですよ。慣れていない分、自分を出し切れないというか。でも、たむけんさんやったら、知っている人と話す感覚で喋れるやろうし、そしたら若手の素の部分も見えてくると思う。
たむけん : いいやん、いいやん。やりたいわ。せっかく選手もたくさんおるんやし、な?
橋本 : そうですよ、いっぱいますからね。総集編に出ていた10人なんて、かなり年齢層が高かったけど、まだまだ若い選手もいっぱいいる。
たむけん : そうやな、じゃあちょっとおっさん連中は下がってもらって…(笑)。
橋本 : (笑)。あの時、確か30代が6人くらいいましたからね。
たむけん : 鉄人・明神もおったしな。でも、明神くんも、あの存在感は最高やったけどね…。
橋本 : ミチ(安田理大)だけが唯一、21才で若くて、その次だと、聡太の27才ですからね。
たむけん : そうそう、安田くんと言えば、俺、前から思っててんけど…ホンマに楽しそうにサッカーをするよね。多分、本人は真剣に走っていると思うけど、俺から見たらスキップしながら攻め上がっているように見える。あの楽しそうな感じは、何なんやろうね。
橋本 : それは、本人にとったら褒め言葉だと思いますよ。楽しむってすごい大事なことだから。そのことをミチ自身も忘れないようにやっていって欲しいですよね。これから年をとって、考えることが増えていく中でも、楽しむことはホンマに大事やと思うから。あいつの良さも、それに支えられていると思いますしね。
たむけん : そうやな、楽しむって大事よな。俺も楽しくなくなったら芸人をやめようって思うもん。

text by/misa takamura

たむらけんじ/プロフィール
1973年5月4日生まれ。大阪府阪南市出身。愛称、たむけん。吉本興業所属。大阪府立和泉高等学校卒業後、吉本総合芸能学院(NSC)に入学。11期生で同期には、陣内智則、ケンドーコバヤシ、中川家、ハリガネロックら。本名、田村憲司。芸人として活躍する傍ら、『炭火焼肉たむら』を経営する株式会社田村道場の代表取締役でもある。『おはよう朝日です(ABC)』『探偵ナイトスクープ(ABC)』『せやねん!(MBS)』『ちちんぷいぷい(MBS)』などレギュラー多数。昨年から始まったガンバ大阪の応援番組『ガンバTV 青と黒(MBS/毎週月曜日、深夜1:35~放送)』のメイン司会を務める。

vol.18 朴一(パク・イル/大阪市立大学)

: 例えばやけど、ハシモみたいに頭のいい選手は、早めに実業家に転身するとか、解説者になるとか、っていう道を選ぶのもいいんじゃないかなって思うけどね。野球の工藤公康(横浜)くんみたいにボロボロになっても投げ続けるのも魅力だと思うけど、ああやってやり続けるには相当の努力がいる訳で。実際、彼もすごく真面目に野球に取り組んでいるでしょ?専用のマッサージ師を自腹で雇って、年間2000万払っているっていう話も聞いたことがあるし。そういう風に長く頑張ろうと思ったら、お金も実際にかかるやろうしね。誰でもがそれを出来るかと言えば、出来ない選手の方がやっぱり多いと思う。
橋本 :そうですね。カズさんももちろんそういう影での努力というか、自分なりの努力をずっと続けてきているから今のカズさんがあると思いますしね。しかも、カズさんは楽しそうにサッカーをやっている。あれはかなりの理想です。

: じゃあ、ハシモは無様な…といったら失礼やけど、例えば下のリーグでプレーするのも全然、問題ないの?
橋本 :基本は、無様でもいいです。楽しくできれば。だから下の方のリーグでも呼んでもらえるのなら、どこでも行くと思いますし。
: それだけの覚悟があるならたいしたもんよな。年俸が例え300万でも?
橋本 :問題はそこですね(笑)。僕個人がよくても、結婚をして、一人の生活ではないだけに、そのへんは軽々しく答えることは出来ない。
: これから子供でも出来たらまた、大変やしな。でもハシモのことやから、何やかんや言って、ちゃんと貯金しているんやろ?
橋本 :(笑)。いますごいやらしい目で僕を見ましたね(笑)!
: だって前に僕が貯蓄法の本を読んでいたら「先生、これ貸してください」って持って帰ったやんか(笑)。朝日新聞のコラムには株もしているって書いてあったし。なかなかプロ的な投資術が紹介されていたけどなぁ。
橋本 :いえいえ、それほどのことではないですよ!むしろ、そのあたりのことは先生にもっと詳しく教わりたいとは思っていますけど(笑)。
: でもやっぱり自営業っていうのは厳しいよな。僕らみたいな普通の公務員なら、60才まで働いて、そこから更に80才まで生きると考えたら、老後は20年あるわけやん?つまり、1年の生活費を平均の300万で考えたとしても、300万×20年で6000万が必要になる。それを年金と退職金でまかなって…っていうことになるけど、自営業の人たちはなかなかそうもいかんでしょ?特にJリーガーとかは選手生活が終わった後の年金ってどうなっているんかなって思う。退職金があるのか、とか…。
橋本 :その部分も少しずつ改善されてきましたけどね。そういう制度的な部分も充実させようとしている最中ですし。

: アメリカの大リーグって、何がすごいかと言えば、大リーグに10年以上在籍したら引退後、年金が毎年、1000万以上貰えるっていうこと。あれはすごいよね。だからマリナーズの長谷川滋利くんとかも、引退して既に日本に戻っていても、大リーグから貰える年金で基本的な生活は保証される。ああいうシステムが Jリーグにもいるんじゃないかな。
橋本 :はい、それは一応僕らも目指しているんですけどね。ただ、まだ基本のベース資金が整っていないから。スポンサーだとか、Jリーグから降りてくるお金だとかっていうのを選手会としてプールしているんですけど、それがもっと大きくなっていかないといけないし、プラス、選手の会費という部分でどれだけ充実させていけるか、っていうことになるとは思う。ただ、昔に比べたら金額的にも徐々に増えてはいますからね。それが毎年貰えるようになればいいんですけど、そこにはまだ到達していないし、そうなるにはまだまだ問題が多いですね。
: ただ特にプロサッカー選手なんていう職業は、サラリーマンには決して味わえない醍醐味もあるからな。それはそれでお金に代えられない大きな魅力なんやろうけど。
橋本 :そうですね。あの緊張感や興奮っていうのは、あの場に立って戦える僕らの特権ですからね。それは確かにお金には代えられない価値も魅力もありますから。
: 引退してないのに、引退の話をするのもなんやけど、ハシモは子供にサッカーを教えたり、っていうことに魅力は感じていないの?
橋本 :いや、それは理想ですね。学校の先生になって、子供たちにサッカーを指導できたら一番いい。
: 高校サッカーの監督とか?
橋本 :いいですね~。あとはこの大学の監督とか…(笑)。
: 市立大学のサッカー部は弱いからなあ。
橋本 :弱くていいんですよ。強くすればいいんですから。
: ああそういうことか(笑)。弱いところのほうが伸びる可能性が高いしなあ。
橋本 :でも大学の講師とかも魅力ですね。

: それなら大学院に入り直して、少なくとも修士をとらなアカンけど、ハシモなら出来るやろう!あとはスポーツマネージメントとかも面白いやろうけどな。
橋本 :それは興味がありますね。
: 実際に現場を知っている人がそういうのを勉強した方がサッカー界にとっても、絶対にいいと思うしな。だから、42才までボロボロになってもサッカーをしているというのもいいんやけどさ…やけど、な?もう言うなって(笑)?
橋本 :いや、先生。42才までボロボロではないですから。僕は42才までフレッシュにやることを目指しているので(笑)。でも、それもケガ次第ですよね。僕はこれまで大けがはない方ですけど、例えば今の30才という年齢でケガをしたら、いろんな意味で…契約年数とかも含めて、サッカー人生に影響が出てくると思うんです。個人的に元のパフォーマンスが戻るのか、っていう不安が出てきたりね。そのへんを克服できたらまた楽しくやれるんでしょうけど…って考えても引退を考えるきっかけはケガになりそうやなって気もしますけどね。
: 海外でプレーしたいとかは思わないの?
橋本 :思いますよ。
: どこの国に行きたいの?
橋本 :スペインですね。スペインだったら僕の体型でもやっていけるんじゃないかと。フランス、イタリア、ドイツ、とかはちょっとキツいかな、と。
: 中村俊輔(セルティック)みたいにスコットランドリーグとかにいって、チャンピオンズリーグに出るっていうのも一つの選択としてあるよな?リーグそのものの質はプレミアに比べたら明らかに落ちるけど、たどり着く場所は最高の場所って言うこともある訳やから。
橋本 :確かにそうですよね。例えばイタリアのセリエAに行けたとして、下位の方のクラブで頑張っていたとしても、そこでどれだけ活躍してもチャンピオンズリーグに出られる訳ではないですからね。そういう基準で選ぶのも一つの手かもしれない。ただいずれにしても、そこで楽しくサッカーが出来るかどうか、っていうのが問題ですね。

: 実際に海外には行けても、出場機会が減ってしまっている選手も多いしなぁ。日本代表ということを考えてもある程度試合に出ている方がいいに決まっているし。…って考えると、今更ながらパクチソンはすごいサクセスストーリーよなぁ。京都にいる時は、きっと彼自身、想像もしなかったはずの今を過ごしている。ハシモも将来的に海外移籍を考えるなら、弁護士とかをつけるのも、いいんちゃうか?
橋本 :一応、代理人はいますよ。
: そういう人がヨーロッパに仲介してくれるの?
橋本 :そうですね。
: じゃあその人を通じて海外からオファーが来るの?
橋本 :形式上はそうですけど、全くないですけどね。自分からお願いしてチャレンジしてみるということは可能だとは思いますけど。ただ今はそこまでまだ真剣に考えている訳でもないので。ガンバで必死です(笑)。
: そら、今はあれだけ西野監督にも信頼されているんやから、頑張らないとあかんよな。もちろん、日本代表でも頑張って欲しいしね。
橋本 :ありがとうございます。
: ハシモのいる世界は、僕らみたいに一度採用されたら、ずっと定年までおれるっていうサラリーマンとは違って、ちょっとでも気を抜いたらすぐに若手が台頭してきて、いつポジションをとられるか分からへんっていう厳しさもあるやろうから大変よな。ハシモももうベテランの域やし、いろんな意味で神経をすり減らしてやっているんやと思うわ。
橋本 :それは、もう!といっても僕はまだ中堅のつもりでいますけどね(笑)。30才でも中堅。これからもそう思って頑張ります!先生、今日は長い間ありがとうございました。
: いやいや、こちらこそ、久しぶりにゆっくり話せて楽しかったよ。僕はいつでも応援しているし、頑張ってや!
橋本 :ありがとうございます。そういう言葉が本当に嬉しいし、力になります。頑張ります!

text by/misa takamura

朴一(パク・イル)/プロフィール
*同志社大学卒業。同大学院博士課程修了。商学博士。
*専攻:朝鮮半島地域研究、日韓・日朝関係論、在日外国人の人権をめぐる諸問題。
*大阪市、神戸市、伊丹市、堺市などで外国人の人権に関する審議会委員を歴任。2005年、国会参議院国際問題調査会参考人。現在、富士火災コンプライアンス委員。
*マスコミ:NHKテレビ『ETV2000』、『アジアマンスリー』、『関西ニュース一番』、『ニュース9』、TBSテレビ『サンデージャポン』、『みのもんたのサタディずばっと』、毎日テレビ『ちちんぷいぷい』、『VOICE』、ABCテレビ『ムーブ』、テレビ朝日『たけしテレビタックル』、読売テレビ『たかじんのそこまで言って委員会』、『たかじんの非常事態宣言』、『ニューススクランブル』など数多くのテレビ、ラジオ番組にコメンテイターとして出演。
*執筆:朝日新聞全国版に『Eメール時評』(2001~2002年)、朝日新聞月刊誌『論座』に「アジア視察」(1998~2005年)、朝日新聞夕刊に「たまには手紙で」(2007年)をそれぞれ連載。著書に『在日という生き方』(講談社、1999年)、『朝鮮半島を見る眼』(藤原書店、2005年)、『在日韓国人』(ソウルポンム社、2005年)などがある。

vol.17 朴一(パク・イル/大阪市立大学)

橋本 :先生の教え子でプロサッカー選手なのは僕だけですか?
: そうやね。ただ、パク・チソン(マンチェスターU)くんは、彼が京都でプレーしている時に何度かお会いしたことはあるね。まさかあのマンチェスターUで、あんなにも活躍するなんて思ってもみなかったし、そのマンチェスターUとハシモのガンバがクラブワールドカップで対戦し、その舞台でハシモがあんな、ウルトラシュートを決めるなんて、夢にも思わんかった(笑)。あれは僕にとって本当に記憶に残るシュートやったよ。さすがに自分でも「(運を)もっているな~」って思ったやろ?

橋本 :いや、思ってないですよ(笑)。っていうか「もっているな」って思っていいんですか?僕の人生、ここまであまりにも「もってるな」グループではなかったもので、よく分からない(笑)。
: いや、あれは「もってる」よ。ただ、僕はあの瞬間、間違いなくハシモはシュートを外すと思っていたけど(笑)。
橋本 :鋭い(笑)。
: で、どうやった?ああいう世界的な、超一流選手とプレーした感想は?結構、プレーでもCロナウドとかと絡んどったよな?彼からボールを奪おうとか、していたし。
橋本 :はい。でもまぁ、実際に戦っている間はいろいろと相手のことを考える暇なく、必死に勝つことだけを目指してやっていましたけどね。ただプレーは全然スケールが違いました。まず、速さが違うのと、グラウンドの使い方が大きい。しかも1つ1つのプレーの正確性にも驚かされた。
: 素人ながら言わせてもらうと、ああいう相手と戦う時に、戦い方は2つあると思う。1つは、圧倒的に力の差がある相手だけに守りを固めて、ぶさいくな負け方だけは避ける。何て言うか、ディフェンス中心のサッカーをして、チャンスがあれば一気に攻め込む、と。そしてもう一つは、ガンバの戦い方。要は点を獲られてもいいから、点を獲ろうぜ、的なサッカーよね。でも結局、ガンバはガンバのスタイルを貫いたからいい試合になったと思うけどね。勝たなくてもいい…とはいわないまでも、自分たちを魅せよう、みたいなね。
橋本 :勝つ気は満々でしたけどね。ただ、先生がおっしゃるように守るというより、点を獲りにいくこと貫こうと思っていた。試合前は、「どんだけやられるんかな~」って不安もありましたけど(笑)。
: マンチェスターUを相手に3点も獲れてんから、たいしたもんよな。あれが5-0やったらちょっと格好つかんけど。
橋本 :相手も僕らが点を獲ったことで…2-1くらいから急に変わりましたからね。本気になってくれたというか。だから僕らも楽しんでサッカーが出来た。
: にしても、あのハシモのシュートは…あまりにもいいところにいすぎて外すやろうと思ったら、スーパーなゴールが決まって、テレビでもアップで映し出されて。その後に結婚式やろ?まさに、結婚式のためのシュートって言ってもいいくらい、出来すぎやったね(笑)。って考えても、去年はホンマにハシモにとっていいこと続きやったから、たぶん、これから先は悪いことしかないで(笑)。
橋本 :いやいやいや、せっかく少し「もってる」風が来てるんですから、もう少し続けさせてくださいよ(笑)。でも確かに、ACLも優勝できて、マンチェスターとも戦えて、ゴールも決められて、元旦も優勝できましたからね。去年はホンマにいいことがたくさんありました。
: で、結婚生活はうまくいってる?
橋本 :まあまあ、いってる方だと思います。といっても、昨日、喧嘩したばかりですけど(笑)。
: そら、喧嘩もするわなぁ。
橋本 :でも食事を含め、いろんな面でサポートしてもらっているので、結婚して良かったなと思います。
: これからは奥さんのためにもプロサッカー選手を頑張らないとアカンな。
橋本 :それはホンマに思いますね。結婚して調子が悪くなったとか言われたくないので、今はその一心で頑張れています。

: 将来のことは考えているの?っていうか、端から見ていても、Jリーグは今、転換期にきていると思うんよね。その中では選手の待遇も含めたステイタスをあげていく努力をもう少しすべきじゃないか、と。今、日本のプロ野球選手の平均年俸は1軍の選手で1億円くらいやけど、それと比べてもあまりにサッカーは低すぎる。しかもサッカー選手は働ける期間も野球ほど長くはないのに、今のままではプロを目指す子供も減ってしまうんじゃないかなぁ。もちろんハシモみたいに日本代表にでもなれば、何かしら引退してからも仕事はあるかも知らんけど、みんながそうじゃない。そう言えば、この間、テレビ番組でハシモの後輩、とかっていう元ガンバの選手が出ていたよ。バームクーヘンを西宮で作っているとか…。
橋本 :サキ(嵜本晋輔)ですね!僕の3つ年下の後輩です。結婚式の引き出物にもさせてもらいました。ブラザーズっていう名前の店なんですけど。
: サッカーを引退して店を始めたんよな?ってテレビで言ってたし、ハシモの後輩って言っていたから「ああいう人を応援してあげなあかんな!」ってかみさんと一緒にその店まで行って食べてきたんやけど、ああやって、サッカーを引退すれば自分で第二の人生を切り開いていかなアカンねんからな。大変やと思うよ。
橋本 :で、美味しかったですか?
: バームクーヘンの味は最高やったけど、店員の対応が悪くてな(笑)。
橋本 :そのコメントはサキのためにも敢えてカットせずに、ちゃんと掲載しておきます(笑)。で、どんな風に態度が悪かったんですか?
: とにかく、お客がイライラしとったわ(笑)。あの地域はスイーツの激戦区やし、あそこで生き残るのも大変やと思うけど、是非頑張って欲しいとは思っているけどね。その話はいいとして、そう言えばさ、サッカーって契約更改の時に年俸が明らかにされないでしょ?プロ野球の選手はある程度、明らかになっているけど…あれは何か戦略的な理由から、わざと隠しいてるの?僕としては夢を与える商売やし、提示をするのもアリかなって思うんやけどね。
橋本 :サッカーの場合、逆に提示すると逆に夢がなくなるからかも(笑)。野球みたいに、5000万アップとか、1億に到達したとか、そういう大きな話はサッカーにはなく、例えば「300万から150万円アップしました!」みたいな感じで可愛いものですからね(笑)。そういうのがバレると逆に夢がなくなるのかも(笑)。
: 日本代表になったら大幅にアップするとか、そういうのもナシ?
橋本 :ないですね(笑)。
: サッカーはまだまだ、お金というより名誉なんかなあ。

橋本 :J2だとかJ1でも下位の方のチームの若い選手なら、例えばサラリーマンをしていてもあまり変わらないという選手が多いっていうのもあるかも知れませんね。しかも、サラリーマンには将来の保証があるけど、プロサッカー選手にはこの先どれだけサッカーを出来るのか、将来の保証はないし、サラリーマン以上に綱渡りの人生ですからね。そうなると、全てをオープンにするのがいいのかどうか…そういう意味で、Jリーグも発足から15年以上経った中で、いろんな意味で難しい時期に差し掛かってきているんじゃないかと思います。
: だからこそもう少しチーム数を改善するとか、さっきも少し話に出た、選手の待遇改善、第二の人生についても、もっと真剣に考えていかなければいけない時期に来ていると思う。
橋本 :第二の人生については選手会も含めて、だいぶサポートがされるようになってきましたけどね。ただ、仕事は紹介してもらえたとしても、金銭的な部分の保証だとかを考えると、難しい部分がまだまだたくさんある。
: 確かにそのへんは難しいよね。今まで何千万と貰ってきた人が、急に「じゃあ、今日から月20万で」っていう訳にはいかないやろうし。それはプライドということを加味して考えてもね。そういう意味ではサッカー選手も何才までやるか、どこで区切りをつけるかは相当みんな考えているんやろうなぁ。ハシモは何才まで現役をやりたいと思っているの?
橋本 :42才です。
: その数字はどこから出てきたん?!
橋本 :カズさん(横浜FC)が基準ですね。
: なるほどね~。ただカズさんやゴンさん(中山雅史)くらい、カリスマ的な存在になれば、そういう生き方も認められるやろうけど、何て言うか…言い方は難しいけど"やめ時"っていうのはホンマにしっかり選択しないとあかんよね。僕なんかは、ハシモにはボロボロになるまでやるより、スパッと日本代表のままでやめて欲しいけどね(笑)。
橋本 :代表のままなら、すぐやめないといけないじゃないですか(笑)!もう少しやらせてくださいよ!

text by/misa takamura

朴一(パク・イル)/プロフィール
*同志社大学卒業。同大学院博士課程修了。商学博士。
*専攻:朝鮮半島地域研究、日韓・日朝関係論、在日外国人の人権をめぐる諸問題。
*大阪市、神戸市、伊丹市、堺市などで外国人の人権に関する審議会委員を歴任。2005年、国会参議院国際問題調査会参考人。現在、富士火災コンプライアンス委員。
*マスコミ:NHKテレビ『ETV2000』、『アジアマンスリー』、『関西ニュース一番』、『ニュース9』、TBSテレビ『サンデージャポン』、『みのもんたのサタディずばっと』、毎日テレビ『ちちんぷいぷい』、『VOICE』、ABCテレビ『ムーブ』、テレビ朝日『たけしテレビタックル』、読売テレビ『たかじんのそこまで言って委員会』、『たかじんの非常事態宣言』、『ニューススクランブル』など数多くのテレビ、ラジオ番組にコメンテイターとして出演。
*執筆:朝日新聞全国版に『Eメール時評』(2001~2002年)、朝日新聞月刊誌『論座』に「アジア視察」(1998~2005年)、朝日新聞夕刊に「たまには手紙で」(2007年)をそれぞれ連載。著書に『在日という生き方』(講談社、1999年)、『朝鮮半島を見る眼』(藤原書店、2005年)、『在日韓国人』(ソウルポンム社、2005年)などがある。