橋本英郎公式サイト「絆」
FRIENDS

vol.5 河野亮(楽天野球団)

橋本英郎(以下、橋本) : 今日は遠いところをありがとうございます。お会いできて嬉しいです。
河野亮(以下、河野) : こちらこそ、現役サッカー選手と話せる機会をもらって喜んでいるんですよ。うちの会社にも橋本さんのファンがいたりして、会社を出てくる際はうらやましがられました(笑)。
橋本 :ありがとうございます。亮さんは、楽天に入られて、何年目ですか?
河野 :05年に入社したから、ちょうど3年目です。最初は二軍の総務の仕事をやっていたんですが、去年の途中から球団として育成に力を入れようということで、ファームディレクターという仕事をしています。これはアメリカのメジャーリーグにはあるポストの1つで、メジャーではマイナーリーグディレクターと呼ばれているんですけど、要は若い選手の育成だとか2軍の監督、コーチ、選手の評価をする仕事で。楽天でも、それに習って同じようなポストを作ろうということになった際、元選手でやった方がいいだろう、ということもあり、僕がやらせてもらうことになったんです。
橋本 :じゃあ、アメリカとかにも結構、偵察に行ったりするんですか?
河野 :ちょうど、10~11月にもハワイ・ウインターリーグに行っていきましたよ。
橋本 :へぇ~っ!で、基本はメジャーの試合ということより、育成リーグみたいなところを中心に見て回る、と?
河野 :その通り、その通り。基本的にシーズン中はずっとファームチームについているんですけど、ちょうどシーズンが終わった時期を狙って、向こうに行っていました。

橋本 :そのファームチームの仕組みも、おそらくJリーグとは全然違いますよね。しかも歴史としては野球の方が断然長いということを踏まえても、今少しお話させてもらっただけで、野球界にかなり興味がわいています(笑)。ファームって今、何チームあるんでした?
河野 :イースタンリーグは7球団ですね。うち、ジャイアンツ、日ハム、横浜ベイスターズの2軍の湘南シーレックス、ヤクルト,ロッテ、西武。で、ウエスタンリーグは5球団でやっているんですけどね。中日、阪神、オリックス、広島、ソフトバンクです。
橋本 :楽天の選手は今、全部で何人いるんですか?
河野 :今年は65人でしたね。
橋本 :サッカーでいえば2チームくらい出来る感じの人数ですね…ちょうどサッカーは30~35名くらいが平均だと思うので。そのうち1軍登録は何人されるんですか?
河野 :28人です。そのうち、ピッチャーが13人を占めているんですけど、ピッチャーを何人置いておくかはチームによってまちまちです。でも13人は多い方だと思いますよ。監督の起用法とかにもよるんですけどね。
橋本 :28人のうち、ベンチには何人、入れるんでしたっけ?
河野 :25人です。だから外れる3人はピッチャーが多いです。
橋本 :下世話な話ですけど…25人全員に勝利給が貰えるんですか(笑)?!
河野 :そうですね。ただ、割合的にはピッチャーが一番多いですね。その次がキャッチャーで、その次が決勝弾を打ったバッターかな…そういう基準は基本的に決められているので、試合ごとにあてはめていく感じです。
橋本 :ただ、最終的に勝ち越さないと貰えないとかっていう決まりがあるんですよね?
河野 :よく知っていますね(笑)。そのラインもチームによって違うんですけどね。僕が現役時代にダイエーでプレーしていた際は、王監督の計らいもあって、1つ負け越しまでは払うとか…そんな感じでしたよ。うちは勝率に関係なく出してくれていますが。
橋本 :今年は結構勝ったから…良かったですね(笑)。まーくん(田中将大選手)の活躍もあって、観客動員も増えたみたいだし…。ガンバでもたまに話題にのぼるんですよ…ほら、早稲田に行った斎藤佑樹選手と、まーくんとではどちらがいい選手か、みたいな話で。僕たちの勝手な意見を言わせてもらうと(笑)、まーくんは高校野球ではああいう形では負けたけどプロ野球で通用するタイプで、将来的に考えても、斎藤選手よりは全然ポテンシャルが上ではないか、と。…どうですか?この見方は(笑)?
河野 :どっちがどうだという明言は出来ないけど(笑)、田中はいい選手だと思いますよ。
橋本 :斎藤くんはプロに行けそうなんですか?
河野 :まだ卒業が先なので何とも言えないけど、球速自体はやっぱりしっかりしたものを持っていると思いますね。あれで身体が出来ていけば、プロ野球選手には必ずなれるとは思います。
橋本 :例えば、高校時代はいまいちの選手が、大学に4年間行ったことでプロとして通用するようになった、ということも多いんですか?
河野 :そういう選手はいっぱいいますよ。実際、そうやって大学で伸びそうな選手は、高校を卒業して大学に行くようになってからも、スカウト陣はずっとチェックしていますしね。
橋本 :上原浩治(読売ジャイアンツ)はそのタイプだったんですよね?東海大付属仰星高校時代はそんなに目立たなかったのに、大阪体育大学に進学してから頭角を現したとか…。
河野 :詳しいですね(笑)。まさにその通りですよ。
橋本 :野球選手の場合、引退する人の平均年齢は何才くらいなんですか?
河野 :26才~27才ですね。
橋本 :え?!もっと上かと思っていました?!ある意味、衝撃です…。ほら、野球って、入団してきた選手を簡単に切らない、というイメージがあったので…。だから1選手の在籍期間がもっと長いイメージがあって。
河野 :まぁ、高卒でプロになった選手はだいたいですけど、最低でも5年くらいは成長過程を重視しながら見ますけどね。ちなみにサッカー選手の引退平均年齢は、いくつくらい?
橋本 :Jリーグでの平均は確か、同じく26才なんです。おそらく21、22才でクビになる選手と30才くらいで引退する選手との間で、ちょうど25、26才なんだと思うんですけど。実際、25、26才でやめる選手は少ないですからね。そこまでやれた選手は逆に30才とかまでやっていますし。ただ30才前後になって、ケガだったり、行くチームがなくなったりして辞めていく、と。そのヤマも乗り越えた選手は一気にもっと長くやっていますけどね(笑)。

河野 :なるほどね。僕は今の立場になってから、30才になった選手には伝えていることがあって。ほら、ちょうどそのくらいの年齢の時って、ファームだと試合にも出られなくなっていくタイミングというか…どうしても、2打席立ったら若い選手が交代して出場したり、っていう感じになっていきますからね。だから、 30才を迎えた選手には「試合の時は監督になったつもりで、自分だったらこうするな、とかっていう風に頭の中で采配をふるって見たらいいんじゃないか」と。で、「逆に練習の時は、自分がコーチだったらこういう練習をこの選手にさせるな、とか、っていう風にやっていったらいいんじゃないか」ということを伝えていて。そうして違う見方をしておくことも、将来的に指導者になって行く上で助けにもなるだろうし、自分を見つめ直すいい機会にもなるだろうからね。
橋本 :なるほど。やっぱり選手を終えた後は指導者に、っていう人は多いんですか?
河野 :そうですね。
橋本 :ただ、確か、野球界ってプロになった選手は高校生を教えられないんですよね?
河野 :はい。といっても、ずっとダメだということではなくて、例えば、学校の先生になった人は教壇に3年立ってからなら高校野球の監督として教えていいんですよ。ただ、ここ数年の間に、現役の野球選手によるシンポジウムで『夢の向こうに』っていうのが出来て。その中ではプロ選手が高校生を教えたりしていますけどね。結局、プロが高校生を教えることそのものが、スカウト活動の一貫にとられたらいけない、ということもあって、そういう規定があるんですけどね。
橋本 :そこらへんはサッカーとは全然違いますね。サッカー界では引退してすぐに学校のコーチとかをしている選手もたくさんいるし。ただ、プロの監督になろうと思ったら資格がいるから、結局、選手を終えてすぐにJリーグの監督になるっていうのは出来ませんけどね。今、楽天には30才を超えてプレーしている選手は何人くらいいるんですか?
河野 :今年は10人くらいかな。
橋本 :確かに、全体数を考えたら、そんなに多くないですよね。65人のうち10人くらいなら、サッカーだと半分だから、1チーム5人という計算になる。で、今年のガンバの30代選手は確か5人くらいだったもんな…そのへんは、サッカーも野球もあまり変わらないということなんですね。驚きました。

text by/misa takamura

河野亮/プロフィール
1971年5月3日生まれ。ヤクルトスワローズ、福岡ダイエーホークス、中日ドラゴンズ、オリックス・ブルーウェーブでプレーした後、某スポーツ用品販売店でのサラリーマン生活を経て、05年に株式会社楽天野球団に入社。東北楽天ゴールデンイーグルスの二軍総務を経て、現在は、チーム統括本部 編成部 ファームディレクターを務める。