橋本英郎公式サイト「絆」
FRIENDS

vol.36 中川聴乃(バスケットボール選手)

橋本:聴乃ちゃんはやっぱり身長が高いから、バスケットを始めたの?
中川:そうですね。あとは、たまたま小学校の時の担任の先生がバスケットの顧問をしていたこともあり、「バスケット部に入らないか」って誘われたんですよね。しかも仲が良かった友だち何人かが、みんなバスケットを始めたもんだから、これはもう入るしかないな、と思って入部ししました。
橋本:出身地の長崎県自体は、バスケットが盛んだったの?
中川:全国の中では結構、強いチームは多い方かも知れないです。
橋本:でも、高校時代、長崎から名古屋の高校に転校しているよね? それはなんで?

中川:中学から高校に上がるタイミングで、何校かから「うちでプレーしないか」みたいな感じで声を掛けてもらっていて。私としては本当はその時により強い高校に行ってバスケットをしたいと思っていたのですが、私の通っていた学校法人純心女子学園は中学、高校の一貫教育で知られている学校でしたからね。それもあって高校に上がるタイミングでは純心を出るのが難しいということになり「それなら、純心でしっかり頑張ろう」と思って県外に行くことはあきらめたんです。でも高校生になって、インターハイや国体に行くにつれて「やっぱりもっとレベルが高いところでやりたい」という思いがどんどん強くなって。それもあって、当時、強豪として知られていた名古屋の桜花高校に転校することを決意しました。
橋本:実際に入ってみて、桜花高校のバスケットのレベルとか練習内容は、どうだったの?
中川:それはもう、全てが違いましたね!中でも一番違いを感じたのは、バスケットをやる環境がすごく整っていたこと。実業団クラスというか…もしかしたら実業団以上にバスケットをする環境が整えられていたし、練習も厳しかったけど、高いレベルの中でプレーすることが楽しくて仕方なかった。それまで自分がやってきたバスケットとはまた違って、単にたくさん練習をして、巧くなればいいというよりは、理論的なこともたくさん学ぶことができたのも良かったと思います。
橋本:単身で名古屋に乗り込んだの?
中川:はい、乗り込みましたね(笑)。だから寮に入りました。っていうか、桜花高校はそういう生活環境も充実していた分、私だけではなく、沖縄から北海道までいろんな県から選手が集まっていました。
橋本:高校時代は178センチだったって言っていたけど、高校の中ではその身長はもちろん大きい方だったよね?
中川:大きい方だったけど、一番ではなかったですね。180センチの選手もいましたし。
橋本:180センチの女子高生って、なんか想像つかへんな(笑)!
中川:確かに、多くはないですね(笑)。
橋本:聴乃ちゃんの場合、背は高いといっても、線は細い感じだけど、女子のバスケット選手ってみんなそんな感じなの?ゴツい感じではない?
中川:どうだろう…でも私は基本的に昔からずっとこんな感じですね。筋トレはちゃんとしているんですけどね。ただ…基本的に筋トレは好きじゃないというか、あわないです。筋肉がつきすぎると、プレーの幅が狭まるし、パフォーマンスが下がる気がして…だから出来ればやりたくない(笑)。
橋本:サッカー選手でもそういう選手はいるけどね。なんていうか…キレ重視の選手は、自分のインスピレーションで動こうとした時に、筋肉がつきすぎていると身体がついてこなくなるらしい。
中川:分かります!基本、私も自分の感覚というか、直感を大事にプレーするタイプですから。

橋本:直感かぁ。イマジネーションの部分も重視されるスポーツは確かにそれがすごく大事なところもあるよね。ちなみに、バスケットはどんな能力が優れていたら、いい選手になると思う?
中川:足は少々遅くてもいいけど、1歩目が速い選手かな。抜くタイミングや、判断のタイミングなど、全てのシーンにおける『瞬間的な1歩目』の動作が速い人。そう思うからこそ、私もプレーする上で『1歩目』はすごく意識しますね。
橋本:それって、もちろん技術があっての話よね?
中川:う~ん。説明が難しいですが、技術が少々低くてもこの世界でプレーしている人たちはたくさんいて。そういう選手がどうして生き残れるかと言うと、やっぱり『1歩目』の、瞬間的な速さに長けているからだと思うんです。あとは…頭を使える人。これはサッカーや他のスポーツでも同じだと思いますけどね。
橋本:僕はまだ聴乃ちゃんがプレーしているところを見たことがないけど、自己判断では、女子バスケット界の中で聴乃ちゃんの『一歩目』は速い方?
中川:自分で言うのもなんですが…おそらく速い方だと思います。
橋本:それは意図して身に付けたものなのか、あるいは天性の才能の部分なのか?
中川:さっきも言ったように私の場合、感覚的にプレーするタイプですから。実際、これまでも頭を使ってというよりは、自分のひらめきとか直感でプレーして来た感じなんですよね。昔から、いろいろ計算して考えて、というよりは感覚で…こっちに動こうとか、あっちに動こうという感じで自然に身体が動いていた。そう考えると意図的に身につけたというよりは、天性のものかも知れないですね。
橋本:でもさっき、頭を使える選手はいい選手だって話があったよね(笑)。そことは矛盾してない?
中川:頭を使うことの大切さは社会人になって気づいたというか。今まではずっと感覚だけでプレーしてきたけど、シャンソンでプレーするようになって、頭を使ってプレーすることが出来るようになれば、もう少し自分のプレーもよくなるのかなっていう風に思えるようになりました。それもあって、今は結構、頭を使う練習をしているというか。手術をしてプレーをできないから、っていうのもあるとはいえ、最近はテレビとかでバスケットを見るにしても、以前よりも考えながら見るようになった。
橋本:『見る』部分で他のスポーツを参考にすることはある?

中川:以前は全く興味がなかったんですよ。同じ静岡を拠点とするJリーグの清水エスパルスの試合をチームメイトが観に行った時も、私は疲れるから行かない、みたいな感じで行かなかったくらいですから(笑)。でも最近は、橋本さんと知り合ったり、ケガを通して他の競技の方と接する機会も増えたことで、他のスポーツにも興味を持つようになって。テレビとかでサッカーの試合を観ながら、頭の中で「ここでこういうプレーをしたら面白いのにな」とか「こうやったら巧く行くかも」っていうようなことを考えるのが楽しくなってきた。っていうか、今はそれしか出来ない分、余計に楽しく感じるのかも知れないけど。
橋本:自分のプレーにおけるイマジネーションの部分は、どうやって身につける感じ?それも『見る』ことによって学ぶこともあったりする?
中川:いやぁ…基本、見るというよりは、やっぱり自分で動く中で、自分の感覚をプレーに取り入れていくという感じですね。
橋本:あまりトリッキーなプレーは好きじゃない?
中川:いや、むしろトリッキーなプレーが好きなんです。でもそのトリッキーなプレーも誰かを真似て…というよりは、殆ど自分の感覚ですね。「こうしたら面白いだろう」とか「こういうプレーは有効かな」って思うことをどんどんコートの中でやっちゃう。ループパスがきた時に、空中でとってそのままシュートしちゃうおとか、ガガガッ~と自分で切れ込んでいっちゃおうとか。新しいプレーの感覚が次から次へと沸いてくる感じで、それを体現していくのが楽しいんですよね。
橋本:じゃあ、今のそういう感覚的なアイデアをもとにしたプレーに、ケガをしたことによって身に付きつつある『考えるプレー』が加わったら、復帰後は更にすごい選手にスケールアップしてそうよね!
中川:だといいですけどね。ケガをする前も、今まで感覚だけでやっていたことに頭がついてくるようになりつつあったんですけど、手術の間に更に考えることのクセがついた分、復帰後、また自分のプレーがいい方に変わっていたらいいなとは思います。ただ、感覚的なものはやっぱり私の武器でもあるので、それは大事にしたいですけどね。

text by misa takamura

中川聴乃/プロフィール
1987年4月26日生まれ。長崎県出身。182センチ。フォワード。地元長崎の仁田小学校から純心中学、純心高校と進み、高校一年生時に名古屋の強豪、桜花高校に転入。その高校3年生時には日本代表に選出される。卒業後はシャンソン化粧品に入社。シャンソンVマジックの選手として1年目から活躍し、同年のドーハアジア大会の日本代表にも選出された。その後は膝のケガに苦しめられる時期が続き、今年、手術を決意。無事手術を終えた今は、リハビリをしながら来年の復帰を目指している。