橋本英郎公式サイト「絆」
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vol.12 森本さかえ(ホッケー女子日本代表)

森本さかえ(以下、森本) : お疲れさまでした。札幌戦快勝、おめでとうございます。
橋本英郎(以下、橋本) : ありがとうございます。せっかく見に来てもらっていたので勝てて良かったです。森本さんも今日は試合だったんですよね?どうだったんですか?
森本 : 今日は『全日本大学王座決定戦』という学生の試合だったので私は選手としては出場していなくて。コーチという立場で戦ったんですけど、山梨学院大学に大敗してしまいました。
橋本 :じゃあ、きっとブチ切れて万博に来たんですね(笑)?!

森本 : いやぁ、今日はある意味、自分の采配ミスだったから…悔やまれる試合になってしまいました。ただ、男子のコーチもやっているんですけど…といってもメインのコーチがいるのでそのサポート的な役割なんですけどね。男子は立命館大学に1-0で勝ち、優勝することが出来ました。
橋本 :大敗って、スコアはどのくらいですか?
森本 : 5-0です。
橋本 :5-0が大敗っていうことなら、ホッケーもサッカーに近いスコアの感覚なんですね。
森本 : そうかもしれないです。サッカーみたいに1-0とか僅差の試合も全然、ありますから。
橋本 :ホッケー選手的に、今日のガンバの4-2という結果はどう見ますか?
森本 : いい内容だったし、快勝じゃないですか?!
橋本 :快勝かな…快勝っていう感じは正直、しいひんかったけどな…でも4点獲ったのは今季のリーグ戦では始めてですからね。ある意味、快勝とも言えるのかなぁ。って、すんなり対談を始めてしまっていますけど、今日はよろしくお願いします。
森本 : お願いします!
橋本 :ホッケーのことはあまり良く知らないので、今日はいろいろ教えてください。僕の通っていた高校にはホッケー部があったので、何となくの知識ならあるんですけど…。
森本 : なんでも聞いてください!橋本さんファンの読者の皆さんにもホッケーを知ってもらえたら嬉しいので!
橋本 :って、こんな悠長に話をしていますけど、五輪が近づいているじゃないですか!いつから向こうに行くんですか?
森本 : 7月28日に五輪に出場する日本選手団の結団式を終えてから国内で最終調整をして、8月6日に北京に入ります。
橋本 :結構ギリギリなんですね。
森本 : はい。向こうは空気があまりよくないし…出来たら試合当日でもいいなっていう感じなんですけど(笑)、そういう訳にもいかないので。
橋本 :この間も中国に遠征していましたよね?あれはどのくらい行っていたんですか?

森本 : 日中国際交流試合を兼ねた中国遠征で、6月11~21日まで10日間くらいだったんですけど、その短期間でも実は喉をやられてしまって。やっぱり相当、煙たいっていうのが印象でした。
橋本 :僕も今年の2月に日本代表戦で行っていたんですけど、かなり煙っていましたからね。
森本 : 向こうにいる間に1日だけ工場が止まっていた日があって。そしたら、こんなに違うんだ!って、びっくりするくらい空気が違いましたから。ただ、喉がやられた以外にも、私は蕁麻疹も出たりして…帰って来てから病院にすぐに行ったけど、しばらくは喉のイガイガも治らなくて。って考えると、今回のオリンピックは3週間も滞在するだけに、若干、不安でなんですけど、マラソン選手に比べたらマシだと思うようにしています(笑)。
橋本 :確かに、ホッケーもサッカーも、試合時間はマラソンほど長くはないですからね。ちなみにホッケーの女子日本代表は何人くらい行くんですか?
森本 : 16人。
橋本 :え?!競技は11人でやるのに、16人は少なくないですか?!
森本 : そうなんですよ。サッカーは、ちなみに何人行くんですか?
橋本 :登録メンバーが18人で予備登録選手が4人いるから全部で22人です。
森本 : そうか…サッカーとホッケーは同じ人数で戦うって考えたら、やっぱりホッケーはちょっと少ない気がしてきました(笑)。いつもそうだからあまり気にしていなかったけど。
橋本 :前回、女子ホッケーとしては初出場となったシドニー五輪がベスト8という成績でした。この数字は初出場ということを考えれば、いい成績だったんですよね?
森本 : 当時のランキングが10位でしたからね。単純に10位から8位に上げられたのは良かったなと思う面でもあったし、当時の自分たちの力を考えても妥当な成績だったと思う。正直、それ以上の順位になるだけの力も、あの時はまだなかったと思うから。もちろん、だからと言って、順位を落とさなかったのは良かったんですけどね。
橋本 :その経験を経た今回ですが、ホッケーのことを知らない人のために説明すると、まずは予選を5試合戦うんですよね?
森本 : そうです。前回は参加チームが10チームだったんですが、今回は12チームに増えたので、6チームずつ2グループに分かれて予選を戦います。で、上位2 チームずつが準決勝に進みメダルを争うのですが、決勝トーナメントに上がれなかったチームも順位決定戦を戦うので、最終的には12チームの全順位が決まるんです。(http://www.hockey.or.jp/topics/20080707/match_schedule.pdf)
橋本 :予選で同グループの国はどこですか?
森本 : アルゼンチン、ドイツ、ニュージーランド、アメリカ、イングランド、そして日本です。
橋本 :その組で、上位2つに入って…あと1回勝てばメダルに手が届くっていうことですよね?しかも、1回勝てば、金か銀が確定するんですよね!
森本 : そういうことです。
橋本 :勝算は?シドニーから4年経った中で、日本のレベルはメダルを狙えるところまで上がってきている、という手応えを持って挑める大会になりそうですか?
森本 : 実力として見れば、狙えるところまでは来ていると思うし、今回の予選の組み合わせも自分たちにとってはすごく恵まれているだけに、なんとか上位2位に入りたい…というより、入らなければいけないって気持ちでいます。
橋本 :同グループでの最大のライバルはどこになりそうですか?
森本 : さっき挙げた国のうち、アルゼンチンが世界ランク2位で、ドイツが3位、日本が5位なんですよね。って考えると、やっぱりアルゼンチン、ドイツ戦あたりが一番の正念場になってくるし、もちろん、他の試合も、オリンピックという大舞台でいかにとりこぼさずにしっかり勝っていけるかが大事になってくると思います。
橋本 :森本さんを含めて、前回のアテネを経験しているメンバーも結構いるのは大きいですね。
森本 : 大きいですね。アテネの時は「オリンピックに出たい」っていうのが目標としてあって。それを実現した中で、大会前は勢いで「メダルを獲るぞ!」って言ってたりもしたんですけど、実際に向こうに行ってみて衝撃を受けたというか。それまでもいろんな国と試合をしてきていたとはいえ、オリンピックのレベルは全然違っていた。結局、アテネ大会ではドイツが優勝したんですけど、ドイツはすごく基礎技術が高くて自分たちとの差をすごく痛感したんですよね。でも、それを感じた上で、この4年間、北京に向かって取り組んできたメンバーが多いのは、今回の北京に挑むにあたり、すごく大きいことだと思います。
橋本 :サッカーでも日本のレベルは年々上がっているとはいえ、根本的なフィジカルの部分での差はあるな、と感じるんですけど、それはホッケーでも感じますか?
森本 : 大いに差はありますね。しかもそれは大きなハンディでもある。だってスティックの長さは同じとはいえ、単純に身長が10センチ違えば、リーチも10センチ違うっていうことですから。
橋本 :そういった体格やフィジカル的なハンディを補うための日本の武器って何ですか?

森本 : アテネで負けた後、一時期はウエイトトレーニングをたくさんするとか、海外と同じようなことをしていたんですよね。でもそうやって2年くらい経ってみたら、逆にすごくケガ人が増えてしまっていたし、実際に同じことで対抗しても根本的な差がある以上、相手よりは上にいけないっていうことに気がついた。そこで個々が体幹をより使えるようなトレーニングとかをするように切り替えたんですけど、それによって日本が特徴にしている細かいパスとか、集団で動いて行くというスタイルが、結構形になってきたんですよね。実際、日本には世界に通用するトップスターはいないけど、いないなりに全体での組織としての動きっていうのが評価されるようにもなりましたしね。しかも、そういうことに1年半くらいかけて取り組んできた中で、最近はより形になってきたし、あとちょっとのところでなかなか噛み合なかった部分も、この間の冬の合宿で更に良くなってきたなという手応えがある。だからこそ、今は自分たちの形で、北京でトライ出来るのがすごく楽しみなんです。
橋本 :その話、サッカー日本代表のオシム前監督とか岡田武史監督が言っていたことに似ていますよ。オシムさんも日本人は体格的に欧州とかに比べると絶対に劣る、と。その中でどれだけ戦えるかを考えると、運動量だったり、狭い地域で人数をかけて崩すとか、早い動きを巧く使うとか、っていうことが必要になるんだ、っていうことを言われていましたから。
森本 : すごく似てる!じゃあ、そうやって組織、グループでやることがある程度、形になってきたあと…最後の勝負のところはどんな風に言っていました?私たちもいま、そこに取り組んでいるので。
橋本 :勝負のところをやる前にオシムさんが倒れてしまったんですよ。形になってきて、ああ、これからだな、っていう感じはしていただけに残念でしたけど。
森本 : そうなんだ…でも、そういうサッカーってやっていて楽しいなって感じませんでした?
橋本 :楽しかったですね。女子ホッケーも、そういう手応えを感じた中で挑める『北京』だからこそ、より「メダル」を意識するということですよね?
森本 : 意識します。絶対に獲りたい。
橋本 :ちなみに女子ホッケー代表の平均年齢ってどのくらいなんですか?
森本 : 27才ですね。4年前にやっていた選手がそのまま今回の代表にあがっている感じなので少し高くなっているんですけど、その分、組織力っていう部分でも間違いなく、アップしている、と思いますし。もちろん、プラスもあればマイナスもあるけど、出来るだけプラスの部分を活かして戦っていければと思っています。
橋本 :森本さんは最年長選手でしたっけ?
森本 : いや、キャプテンをしている人が最年長で37才です。
橋本 :といっても、キャリアを考えれば森本さんも「自分が引っ張っていこう!」的な意識も強いんですか?
森本 : いや、私だけではなく今回の代表は30才代が6人いますからね。みんなでチームを引っ張っているような感じですから。それも今回のチームの強みであるとも思います。
橋本 :なんか聞いているだけでメダルを期待しちゃうな~。といってもあまりプレッシャーをかけてもいけませんよね(笑)。とにかく頑張ってきてください。サッカー同様、注目していますから!
森本 : ありがとうございます。

text by/misa takamura

森本さかえ/プロフィール
1977年1月20日生まれ。奈良県出身。天理高校時代にホッケーをはじめ、天理大学に進学。卒業後の99年にゴールドウィンに入社し日本リーグ、社会人、全日本、そして国体の四冠を獲得するなど強豪として名を馳せたが、00年12月に休部。それに伴い01年、天理大学に移籍。天理大学職員として在籍し、同大学の社会人ホッケーチームの選手兼コーチとしてプレーを続けている。またリーグの合間を縫って05年9月にはスペインリーグ『オレンセ』に日本人選手として初めてレンタル移籍を実現した。
代表歴は大学2年時に初めて日本代表(現さくらジャパン)入り。04年にはアテネ五輪に出場し、8位入賞に貢献。世界のトップ10プレーヤーにも選出された。以降、05年の『第4回東アジア競技大会』の金メダル獲得をはじめ、07年には『第6回アジアカップ』で優勝するなど、目覚ましい成績を残しながら成長を続ける女子ホッケー界にあって、必要不可欠な存在として活躍を続けている。ポジションはFW。165センチ、63キロ。