橋本英郎公式サイト「絆」
FRIENDS

vol.2 加藤美樹(DJ)

橋本 :ところで、美樹さんは、なんでDJになろうと思ったんですか?
加藤 :正直、なろうと思ってなった訳じゃないというか…。こう言うと、夢を持って「DJになろう!」って思っている人に失礼かもしれないんですけど、始まりは偶然なんですよね。モデルの仕事をしていた時、モデル友達にDJをやっていた「小牧ユカちゃん」がいて、彼女のラジオ番組に一度ゲストに出たんです。そしたら、その時の声を番組のディレクターさんが、気に入ってくれて「DJのオーディションを受けてみませんか?」って言ってくれたんです。それがきっかけ!アシスタントからのスタートでしたけどね。
橋本 :モデルの仕事をやっていた時からDJも興味くらいはあったんでしょ?
加藤 :全然(笑)。ラジオでおしゃべりするなんて、想像したこともなかったなぁ。モデルの仕事が楽しかったし、どちらかと言えば、お芝居は、やってみたいなぁと思って、その勉強はしてましたけど…。
橋本 :モデルはどのくらいやっていたんですか?

加藤 :中学3年生の時にスカウトされてから3年間くらいやってたんだけど、高校時代の後半はちょっと太ったりもして中断(笑)。
でも大学に入った時に「もう一度、真剣にやってみよう」って思い直して、まじめに取り組んだの。そしたらモデルが楽しすぎて、危うく大学の単位を落としそうになったけどね。(笑)。
橋本 :それだけ仕事がバンバン入ってきていたっていうことですよね?!
加藤 :うん。とても有り難い話だけど、当時は休みがないくらい、忙しかったですね。
私の通っていた大学は幼稚園からエスカレーター式で進級出来たんですけど、追試や補修がない分、あとから授業を受けられないの。だから授業に出ていないと単位がとれなかったんですよ。。だからかなぁ?テストがなくなった今でも「卒業できません」って通知を受ける夢を見たりするの(笑)。
橋本 :(笑)。エスカレーター式っていうことは、幼稚園でお受験を経験したんですか?
加藤 :そう、そう。幼稚園の受験も落ちそうになりましたけどね(笑)。最初の試験は、お部屋の真ん中におもちゃが無造作に置いてあって、「そのおもちゃで好きに遊んでください」って…。要は、友達との協調性とかを見るらしいんですけど、その時私は電話が大好きだったから、電話のおもちゃをとったの。そしたら、普通、家の電話って受話器をあげたら「プー」って鳴るじゃないですか?なのに、そのおもちゃの電話はいきなり「もしもし、私、リカちゃん」って喋ったの!それがすごく怖くなっちゃって大泣きで…。
おまけに面接でも、待っている部屋の壁に白いプチっとしたボタンみたいなマークがあって…。後できいたら、雀のフンだったらしいんだけど(笑)~。どうしてもそれを押したくなっちゃって、おそるおそる押したら、その瞬間にタイミングよく部屋のハト時計が鳴って(笑)。今度は、それが怖くて泣きまくり、「もうあの部屋には入らない」って。もう少しで試験を受けられないところだったらしいんですよ(笑)。結局、少し時間をおいてから受けさせてもらって、何とかお情けで受かったんですけどね(笑)。
橋本 :いろいろ、やらかしていますね(笑)。DJの仕事を始めた時は、モデルの仕事はどうなっていたんですか?
加藤 :その頃はもうモデルの仕事をやめちゃっていたから。お芝居をやろうと思って、ちょっとだけ舞台に出たり、テレビに出たりということをやっていた時だったの。でも、なんとなくテレビの仕事には向いていないかな、って思いもあって。そのタイミングで声をかけていただいたから、どんどんラジオにはまっていった感じですね。実は、音楽のことも、ラジオが始まってから勉強をしたんですよ。(笑)。
橋本 :それまでは音楽は全然?
加藤 :全然聞いてないですね(笑)。
子供の頃から「Char」さんが好きだったり、「山下達郎」さんの番組は好きで聴いたりは、してましたけどね。
ただ、1つすごく印象的だったのが、その「達郎」さんの番組の前後どちらかで、「杉真理」さんっていう方がDJをされている番組があって。その人が番組を終わる時に「じゃあ、またね。バイバイ」というフレーズを必ず言ってたんですよ。その感じが私としては「すごくいいな~」って思っていて、「私もいつかラジオ番組を持つようなことがあればこれ言おう」って漠然と思っていた記憶がありますね。そのことを、実際にDJになってから、ある日突然、思い出して、それからは自分が担当する番組では、それを言うようになっていったんですよね。とはいえ、自分としては、特別そのフレーズを大事にしていた訳でもなく(笑)。
でも、ある時、ある番組でそのフレーズを言わなかったら、リスナーさんからすごく怒られたことがあって(笑)。そんなこともあってか、いつのまにか言うのが当たり前な感じになってきちゃったんです。でも、もし私が「杉さん」に憧れたように、私のそのフレーズを好きだと思ってくれる方がいたら、それはとても嬉しいことですけどね。
橋本 :いい話ですね~。音楽はともかく、話すこと自体は好きだったんですか?

加藤 :そんなことないですよ。どちらかと言えば、人と喋るのが苦手だったし。でも、やるとなったら、やらなければ!ということで、NHKの通信講座で勉強したりは しましたねぇ(笑)。ただ、お芝居の稽古をしていたことが少しは活かされているかもしれないなぁ。だから、私の喋りって、基本的にはプロとしては、全くなってないですよね(笑)。幸いこの喋りを『個性』という風にやってこれたから良かったけど、大阪で番組を始めたばかりの時は、リスナーの方から「その喋り方、気持ち悪い!」って言われたこともありましたよ(笑)。
橋本 :そうなんですか?!大阪に来て何年でしたっけ?
加藤 :13年になります。
橋本 :『Flower afternoon』はいつからやっているんですか?
加藤 :あの番組自体は10年くらい続いているけど…私は9年かな。
橋本 :じゃあ、僕はたぶん、ほぼ最初から聞いてるんじゃないかな!僕が車の免許をとったのが、プロ1年目の12月で…今、僕は10年目ですからね!東京出身の人が大阪のラジオ局のオーディション受けるのって、当時は普通だったんですか?
加藤 :FM802で仕事をしている自分が言うのも何だけど、全国でこの仕事をしている人の中に、大阪のFM802を知らないって人はおそらくいないと思いますよ。私もオーディションで入ったけど、今もオーディションを受けに、すでにDJの仕事をして番組をもっている人も、たくさんデモテープを送ってくるくらいですからね。
橋本 :どうしてFM802が良かったんですか?

加藤 :この仕事が面白くなってきて、東京FMでも一人で番組を持つようになった頃に、「Mr.Children」の音楽と出会ったんですよ。デビューアルバムから本当に好きで良く聴いたの。そしたらそのアルバムの中のデビューシングル「君がいた夏」っていう曲が、FM802のヘビーローテーションになったって聞いたんです。その時に「ヘビーローテーションって何?」って当時の東京FMの制作の人に聞いたら「全番組で必ずかかる曲だよ」って教えてもらって、「すごい」って思ったの。しかも、当時はまだ「ミスチル」がHITしてない時だったからね。なのに「新人の曲を、全番組でかけるの?」ってびっくりしちゃって。しかも、1コーラスだけとかでもなく、最初から最後までしっかりON AIRするでしょ。そのことに感動して、「オーディションを受けてみたい」って思ったの。その時、東京FMと802を掛け持ちで仕事をしているDJの方に「紹介するよ」って言ってもらったりもしたんですけど、「なんか、それじゃあダメだ!」って直感で思って、1からオーディションを受けようと決めたんです。でも実際は、1次オーディションでいきなりダメで、お断りの手紙をいただいちゃったんですよ…しかも、手書き(笑)。でも、「オーディションの返事を手書きでくれるなんて、なんて丁寧な…」って思っていたら、実際は、後で聞いたところによると、当時私が、同じエリア内の神戸『KISS FM』で仕事をしていたからというのが、その理由たっだみたいなんですけどね(笑)。
橋本 :で、もう一回、受けた、、、と。2回も受けようと思ったほど魅力があったんですね。
加藤 :うん。1回目は「なんでダメなのかな、2次にも呼ばれないんだ…」ってすごく悔しくて。でもお断りは手書きだし、変だなって(笑)。
で、私にも意地があったから、「もう一回挑戦したい」って思って履歴書を送ったら、今度は2次試験を飛ばして、3次から呼んでいただいたの(笑)。なんでだろうって思いながら、受けたら今度は、いきなり合格。でも、なかなか担当番組が決まらなくてね。しばらくして、ある時、いきなり日曜日の番組をもらっちゃった時は、うれしかったなぁ。
橋本 :普通、なんでも中心は東京だ!みたいな感じがあって、どちらかといえば地方から東京を目指すじゃないですか?でも、FM802の場合は、逆ですね。東京の人が関西を目指してる(笑)。
加藤 :そう。でもやっぱ、東京でやりたいっていう人は今でも多いと思うよ。ただ、私としてはやっぱり地方の良さってあると思うんですよ。特にFM802はね。日本全国のラジオ局の中でも新人アーティストの発掘や、HIT曲発掘には特に定評があるし、なんと言っても音楽をとても大切にしている局だと思うんですよ。世の中には、いろんないい曲がたくさんあってそんな音楽達を愛して、アーティストを敬って、人との繋がりとかを大切にしていく、そんな事を放送局全体でやっているようなところは、なかなかないんですよ。それがやはりFM802の一番の魅力だと思うなぁ。
これは、大阪の街や、大阪の文化も関係していると思いますよ。街の大きさとか、音の伝わり方、話題の伝わり方も地域色が出るし。そういう意味では大阪が生んで、大阪が育てたラジオ局だって思うし、実感します。
橋本 :13年やってきて、DJは天職だと思いますか?
加藤 :よく聞かれるんだけど、そう言いきれるほど自信は持ってなくて…っていうか、一生そ の自信はないと思います。天職って言えるほど何かしたわけでもないし、自信があるわけでもないし…、情けないんですけどね。でも…天職って何でしょうね?
橋本 :そうですよね。僕もサッカー選手は…天職っていう感覚はないですね。っていうか、むしろ自分で天職って言える人は凄いと思う。
加藤 :そうですよね。私もそう思う。天が与えてくれた職だと考えるなら、天職はむしろ自分で判断するものじゃないというか…そう思いますね。
橋本 :そうですね。
加藤 :でもこの前、あるコンダクターの方がテレビで「この仕事は天職です」って答えていたのは凄く格好よかったですけどねぇ~。だからきっと、言える人もいるんですよ。
橋本 :でも美樹さんの声は生まれもってのものだから、ある意味、天が与えた才能ですよね。練習したところで、その声は出来上がらないし。
加藤 :これはラッキーだっただけですよ(笑)。でも誉められると嬉しいけど。
橋本 :自分の声は好きですか?
加藤 :声は好きかな。
橋本 :それはいいことですね。
加藤 :でも声って面白いもので、自分の声を知らない人ってすごく多いんですよ。
橋本 :うわっ。僕も分かっていないです。
加藤 :こうして普段、話している声ってあるでしょ?これも人によっては地声で話していない人もいて。これは芝居で覚えたんだけど、人によっては「これが地声だ」って思っていても、実際は違っていたりするんですよ。まぁ、難しいことは抜きに、一番普通に、楽に喋れる声が地声なんですけどね。
橋本 :じゃあ、美樹さんはラジオでも地声ですね。
加藤 :ほとんど地声。あまり変わらないですからね。
橋本 :僕もあまり変わらないかな?
加藤 :そうですね。ハシくんのテレビを通して聞く声も普段の声かなぁ。
橋本 :僕、自分が喋っている時に聞こえてくる自分の声は好きなんですけど、テレビとかを通して聞く声ってあまり好きじゃないんだけどな。
でも同じなら…残念(笑)。
加藤 :そうかなぁ。耳に入りやすい、素敵な声をしてますよ。顔つきも最近変わってきて、すごくいい顔になったように思うし。代表に選ばれる前と後では、全然違うと思うんですけど。
橋本 :疲れている、いないではなくて(笑)?
加藤 :違う、違う。やっぱり厳しい戦いの場に行くと、顔つきも変わるんだなぁって…、きっと。

text by/misa takamura

加藤美樹/プロフィール
3月26日生まれ。B型。1994年の802DJオーディションに合格。音楽に、生活に、独自の優しい視点をもつ彼女。802のお昼の顔として人気上昇中。
現在の担当番組:「FLOWER AFTERNOON」 MON-TUE 13:00-16:00、「フロム・エー/フロム・エー ナビ SUPER J-HITS RADIO」 SUN 19:00-22:00